最初にしたのは、ウィッグ探し。髪が抜けてしまうのが怖いなら、それに備えよう! と。いざ探し始めたものの、日本の医療用ウィッグは黒や茶が多く、なかなか私らしい色のものが見つからない。「髪色なんてなんでもいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、私にとっては、今までと変わらない自分でいることが、治癒を諦めないモチベーションにもなる。

 その時に私はようやく自分のやるべきことがわかった気がしたんです。ウィッグや化粧品など、抗がん剤治療中の患者さんが安心して使えて、自分らしくいられるアイテムを紹介できれば、私の経験が少しでも役に立つんじゃないか。今回、SNSでがんを公表したのも、そういう気持ちがあったから。がんになって、新しい世界が開くのは皮肉ですが、このワクワクが治療を頑張る力をくれています。

SNSでがんを公表(本人インスタグラムより)

「私がバリカンやってあげるよ」

── アンナの闘病生活は始まったばかり。抗がん剤治療の後には、右乳房の全摘手術も控えている。

 抗がん剤治療の効き目は人それぞれで、数カ月で終わる人もいれば、何年もかかる人もいるそうです。

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 私はすでに2回、抗がん剤治療を受けましたが、気持ち悪くなってしまい、精神的にも落ち込みました。いつまで治療が続くのだろうかと不安な気持ちもありますが、今日ここへ来る途中、車の窓から「とんかつ」って看板が見えて、食べたいと思えたことがすごく嬉しくて。この食欲が次の抗がん剤に備える自分の武器になる。主治医からは「好きなことをやっていいよ」と言われていますが、自分で「違うな」と感じることはやめたり、自然体で過ごしています。

 一方で、すでに抗がん剤の副作用も出始めています。実は、今朝、シャンプーをしていたらごっそりと抜けた髪の毛が頭の上でドレッドのように絡まってしまって取れなくなったんです。突然のことに思わず、「わー!! 大変!」ってママを呼んでしまいました。いくらリンスをしても取れず、結局、ママに髪を切ってもらいました。そうしたら頭頂部がフランシスコ・ザビエルみたいになって(笑)。だから今日は用意していたウィッグを着けてきたんです。

 アメリカで暮らす娘が今度帰国してくれることになり、「私がバリカンやってあげるよ!」と、頼もしいことを言ってくれ、私も楽しみにしていたのですが。