都会のホームレスは減っている

【おば】なるほど。そうするとやっぱり、都会なら都会で、その人が暮らす地域で家を与えるってことが最善策になる?

【安部】そうだね。ちなみにホームレス問題が顕在化して20年以上が経つわけだけど、都会でも路上生活者の数は年々減ってる。

【おば】そうなの? たしかに、昔と比べて見かける機会は少なくなったような……。

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【安部】実際に2007年と比べて、8割以上減ってるんだよ。2024年に日本でカウントされたのは2820人。「ホームレス」って典型的な「社会課題」として思い浮かべるかもしれないけど、だいぶ状態は改善されてきてる。

【おば】なーんだ! じゃあ、このままだんだん減っていきそうだね。

【安部】ホームレス支援をする非営利団体が路上生活者に炊き出しをしたり物品を支給したり、凍死や飢えで亡くなるケースを防ぎ、生活保護申請をサポートしていった。そうした活動の成果が功を奏したからだね。支援をすれば路上生活やホームレスから抜け出せるってことも示されたんだよ。

【おば】すばらしいね!

「劣悪な住環境」が与えられるケースもある

【安部】それでも抜け出せずに取り残されてしまった人もいる。その人たちにとっては、仕事よりも何よりもまずは「安心して過ごせる個人的な場所が、中長期的に確保されていること」が重要なのよ。ただ家を与えればいいってわけじゃない。

【おば】どういうこと?

【安部】日本でも生活保護の一環として自治体が住まいを与えるケースもあるんですよ。ただ場合によっては劣悪な環境だったこともあった。2段ベッドが10個も20個も置いてある虫がわくような衛生状態の宿舎で、集団生活を強いられていたこともある。

【おば】ちょっとそれはいくらなんでもひどいわね。

【安部】食事は朝晩の2回、門限が20時とかって話も聞いた。個人的な空間がないからプライバシーが確保されないし、監視されているかのようだし、「これなら路上のほうがマシだ」って出ていっちゃう人もけっこういたんだよね。