【安部】ホームレスは主に貧困と結びついてるわけだけど、その背景にある課題は時代によっても違って。もともとは1990年代のバブル崩壊後に社会問題として取り上げられるようになったのね。そこから2008年、リーマン・ショックをきっかけとする世界不況が起こったときに、派遣労働者の解雇や雇い止めがあって、多くの人がホームレス化した。
【おば】景気が悪くなると、仕事を失う人が増えて、ホームレスが増えるんだ?
【安部】当時は社会の景気が雇用の問題に密接にひもづいていたわけだけど、ここ最近はある程度景気も回復して、求人倍率も改善しているから、働ける人はホームレスを脱していった。一方で、年齢や障害などの事情で働けない人たちが取り残されている傾向があるんだよね。つまり、福祉の問題とひもづくようになってきた。
まずは「住まい」から回復させる
【おば】精神障害や発達障害があって、働きたくても働けない人たちをどうするかって話? 現代のホームレスの問題を解決していく手立てはあるの?
【安部】解決策はわりと明確かつシンプル! 「ハウジングファースト」っていう手法があるのよ。1990年代にホームレス支援としてアメリカで始まってヨーロッパに広がったんだけど。「住まいは基本的人権である」っていう考え方をもとに、ホームレスに最初にプライバシーを保護できる住まいを提供すること。家がないホームレスに対して、住まいという「資産」の回復から始めるわけ。
【おば】重要なのは、住まい! でも、住まいを与えるってけっこうハードルが高くない? ホームレスって都会にしかいないイメージだしさ。あ、地方の空き家は⁈ 都会よりは家賃も生活費も安いし、暮らしやすそうなイメージ。
【安部】そうなんだけど、田舎は田舎で地域のコミュニティが色濃くて、人を受け入れる幅がせまいんで、そこに自分を合わせていかなきゃいけなかったりするのよ。
コミュ力が高い人はその幅をこじ開けていけるんだけど、人間関係に苦しんできた人たちにとっては、匿名性の高い都会のほうがいやすいんだよね。