【おば】人権が尊重されてない感じ。なんでいい大人に「門限」が必要なのよ?

【安部】行政は何かあったときの責任を取りたくないから、ある程度ルールを設けるわけ。「ルールを破った」とかを言いぶんにして追い出せるようにしておきたい、という側面もある。

【おば】そんな、無責任な……。

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「人間関係」の資産を取り戻す

【安部】そういう場所を管理する行政職員たちも、ローテーションで専門性がない場合も多いしね。つまり、生活保護を受けるホームレスを支援する予算も人材もかぎられている。生活保護は憲法で保障されている権利で、しっかり受けるべきなんだよ。にもかかわらず、一部の自治体では、偏見から生活保護の申請を拒否したり、支給を渋ったりする職員がいる場合もある。

【おば】ひどい! なかなか状況は厳しいな。どこから手をつければいいわけ?

【安部】まずは、せまくてもいいから一人でいられる個人的な部屋を用意すること。そのうえで、コミュニケーションできる環境が設計できるといいんだと思う。コロナ禍とか仮設住宅とかでもそうだけど、人ってまったく他人と関わらないと、心が鬱々としてくるので。

【おば】私なんて、1日人としゃべらなかっただけで鬱々としてくるわよ!

【安部】だから、個別の部屋に行く前に共有スペースがあって、「今月どう?」なんてつかず離れずの距離でなんとなく気にかけてくれるゆるやかな人間関係があるといいよね。家族や友だちじゃなくても、ある程度の人間関係は誰もが必要だから。

【おば】毎日ちょっとあいさつできるだけでも違うだろうねえ。

【安部】生きづらさを感じている人たちが、なかなか自分から関わりをつくっていくのは難しいから、住まいの設計でサポートしていく。そういう場所で「住まい」そして「人間関係」の資産を取り戻すことが、ホームレスを脱していくスタートラインになるんだよ。

安部 敏樹(あべ・としき)
一般社団法人リディラバ代表理事
1987年生まれ。株式会社Ridilover代表取締役。2009年、東京大学在学中に、社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム「リディラバ」を立ち上げる。2012~15年度、東京大学教養学部にて、1・2年生向けに社会起業の授業を受け持つ。2017年、米誌『Forbes(フォーブス)』が選ぶアジアを代表するU-30に選出。2024年、世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダーズ」に社会起業家として選出。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、読売テレビ「ウェークアップ」、ABEMA「ABEMA Prime」コメンテーター。
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