ついに動き出した第2次トランプ政権。“保守主義”“排外主義”と言われ、女性への性加害も指摘されるトランプ氏だが、彼の背後にもまた、過激な言動を繰り返す存在がいる。

 トランプとは一体何者なのか。トランプ政権を支えるのはどのような人々で、彼らは社会にどのような影響を与えうるのか。在米ライターの堂本かおる氏が寄稿した。(全2回の1回目/続きを読む

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 1月20日に行われた大統領就任式の会場を、ドナルド・トランプは直前に変更した。アメリカ合衆国議会議事堂前の広大な広場から、議事堂内のロタンダ*に。理由は「寒さ」だった。
*議事堂のドームの下にある円形の大広間

2025年1月20日、就任式でのドナルド・トランプ大統領 ©EPA=時事

 会場の狭さから一般市民は参加不可となったが、トランプはマーク・ザッカーバーグ(メタ)、ジェフ・ベゾス(アマゾン)、ティム・クック(アップル)、スンダー・ピチャイ(グーグル)、ショウ・チュウ(TikTok)、そしてイーロン・マスク(テスラ/スペースX)といったIT企業CEOたちを招いた。いずれも100万ドル、もしくはそれ以上の寄付を就任式費用として納めている。

 ロタンダでの宣誓の後、トランプは恒例の就任パレードを行わず、ワシントンD.C.にあるキャピタルワン・アリーナに一般の支持者を招いての室内イベントを行った。予定されていた屋外での就任式用に22万枚の入場券が配布されていたが、アリーナの収容キャパシティは2万人だった。

 アリーナにしつらえたステージ上に机と椅子を置き、トランプは支持者が見守る中、9通の大統領令に太いマジックマーカーで大きく黒々と署名した。最初の大統領令は「バイデン前大統領による78通の大統領令の撤回」だった。支持者たちは78項目の内容を知らないまま、拍手喝采を送った。

前回の就任式はガラガラで、オバマと比較された

 トランプは第1期の就任式がガラガラで、オバマ元大統領の満員の就任式と散々比較された。今回も同じことが起こるのを恐れて狭い室内に変えたのではないかと言われている。

2009年1月、オバマ大統領(当時)の就任式を一目見ようと議事堂前に集まった人々 ©AFP=時事

 しかしアリーナでの署名はトランプが得意とする、文字通り劇場型のパワー誇示パフォーマンスだった。トランプは満面の笑みで支持者に向かって「バイデンがこんなことをすると思うか? 俺は思わないね」と語りかけ、自身がカマラ・ハリス前副大統領との選挙に勝って大統領に就任してもなお、バイデン前大統領に対するライバル心を隠せないでいる。

バイデン前大統領 ©時事通信社

「俺は誰よりも優れている」と信じ、それを世界に喧伝する。これがトランプの本質であり、米国大統領の座に固執するのも、そのメンタリティが理由だ。