着目すべきは、“トランプをも凌ぐ排外主義者”

 今後4年間のトランプ政権を観察するに際し、着目すべき人物がいる。大統領次席補佐官のスティーブン・ミラー(Stephen Miller) だ。

大統領次席補佐官のスティーブン・ミラー氏 ©時事通信社〔CNP/時事通信フォト〕

 昨年の大統領選の終盤に、トランプ支援に急に飛び込んで来たのが、イーロン・マスクだった。 トランプの選挙キャンペーンに莫大な寄付をしただけでなく、激戦州で選挙人登録をした有権者の中から毎日1人に100万ドルを贈呈することもした。法律違反ギリギリの行為だったが、世界一の富豪ならではの、まさに金にモノを言わせる戦術だった。マスクは自身が所有するSNS「X」もフルに使い、トランプを盛り立てた。

トランプ氏とイーロン・マスク氏 ©時事通信社

 派手に立ち回るマスクの陰で、トランプの再就任に向けて4年前から密かに準備を進めてきたのが、第1期に大統領上級顧問を務めたミラーだ。第1期にトランプを取り巻いた者の多くが解雇、辞職、または刑務所行きとなったが、ミラーは生き残った。

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「不法移民の国外退去」「トランスジェンダー排除」「出生地主義の廃止」

 トランプは選挙戦中より「不法移民の国外退去」「トランスジェンダー排除」「出生地主義の廃止(米国で生まれても親が市民権もしくは永住権を持たない限り、子に米国籍を与えない)」などを公約として繰り返してきた。こうした米国内政策を大統領令として書き上げたのがミラーだ。

 というより、ミラー自身がトランプをも凌ぐ排外主義者、アンチ移民主義者と言える。まだ39歳のミラーはカリフォルニア州サンタモニカというリベラルな土地で生まれ育っているが、高校時代に早くもアンチ移民発言を繰り返すようになっている。ミラーが高校のクラス会長に立候補した際のスピーチが、ミラーの主張を嫌っていたクラスメートによって録音されており、最近になってミラーの人間性を物語るものとして報じられた。

「自分で自分のゴミを拾えと言われることにうんざりしているのはオレだけだろうか、給料をもらって生徒のために働いている用務員がたくさんいるというのに」

 カリフォルニア州という土地柄、用務員の多くはヒスパニックだったと思われる。

トランプホテルの前で妻と記念撮影をするミラー氏(本人のXより)

 大学でも保守的な活動を盛んに続け、31歳でトランプ政権の一員としてホワイトハウス入りを果たした。トランプは第1期にムスリム7カ国からの米国入国禁止、メキシコとの国境を越えてきた親子の引き離しを行い激しく批判されたが、こうした政策の背後にいたのがミラーだった。