ボトムアップの増収増益が実現する世界

――周辺産業への波及効果が高いわけですね。

安野 興味深いことに、経済学者のエンリコ・モレッティは、とくにハイテク産業において都市の高技能労働者が増えると、他の分野の労働者の賃金も上昇することを指摘しています。教育レベルの高い人々との交流で、知識の伝播が促進され、まわりも生産的で創造的になるというのです。

 これは何を意味しているかというと、新技術に明るい人材によって、その周辺で働くひともクリエイティブな刺激を受けるのです。たとえば他業種においてもDXが進んで生産性が上がったり、新しいアイデアやブランディングでこれまでになかった販路が開かれたりする。

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 これは従来からよく言われてきた、高所得者を作り出せば低所得者も恩恵に預かれるという「経済トリクルダウン」とはちょっと異なる話です。むしろ地域の創造性が刺激されることでボトムアップの増収増益が実現する世界で、まさに下村治のいうように「国民の創造力」によって経済成長が実現するのです。

 これはとくに課題の種類が多い現代において合理的で、「現場の自分にしか見えていない」問題がたくさんあるわけです。これはトップダウンでは解決しづらく、ボトムアップのアイデアや解決策こそ有効です。

 グローバルなビジネスネットワークにしたたかに接続する国家戦略と、ボトムアップの創造性の活性化という両輪でこそ、日本経済はリブートできると考えています。

――非常に説得のある戦略ですね。

安野 必要な意思決定を迅速に行い、小さなチャレンジがしやすくなる社会システムへの改革は、経済の底上げにも大きく寄与することでしょう。本書のタイトル『1%の革命』には、「最初に新しいことにチャレンジする1%の人」が社会を変えてきたという思いを込めています。この本が、日本に大きな変化を生む最初の1%の革新になることを願ってやみません。

『1%の革命』(安野貴博 著)
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『1%の革命』刊行記念 
「誰も取り残さない『未来』の話をしよう」

安野貴博 × 黒岩里奈
2月9日(日曜)14時~ 青山ブックセンターにて
申し込み 
https://aoyamabc.jp/collections/event/products/2025-2-9

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