Aくんへのイジメがエスカレートする中、母親は学校に何度も相談し、登校に付き添うなど思いつく限りの対策をしていた。

「Aにも『何かあったら先生に言いなさい』と教えていました。暴言の内容がひどかったので、担任に、Bの保護者にもイジメのことを伝えて欲しいとお願いもしています。しかし担任は協力的とは言い難い反応でした。Aに対してもそうで、勇気を出して『死ね』と言われたことを伝えた時は、担任は『死んでないから良いじゃないですか?』と言ったというんです。階段で押されたときも『気にしすぎです。気にしない』と」

「いじめで間違いないですか?」「いじめ……本人がそう思うなら」

 しかし実は、学校側はAくんが受けていた行為を6月の「トイレ閉じ込め」の時点でイジメと認定して調査を開始していた。

ADVERTISEMENT

 いじめ防止対策推進法では、いじめが発生した場合、学校が調査を行うことが義務づけられている。学校側は校内のいじめ対策委員会で調査を実施し、さいたま市に報告も行っている。

 ただ同時にいじめを受けたAくんや保護者への支援や、加害行為を行った児童に指導をする必要もあるが、Aくんや保護者は調査を行っていることを伝えられていなかったという。

写真はイメージです ©AFLO

「学校は6月にいじめを認知したようですが、それを私たちが知ったのは10月にかかってきた市の教育委員会からの電話がきっかけでした。直後に担任に電話をして『この件は、いじめで間違いないですか?』と聞くと、『いじめ……本人がそう思うなら』と答え、ようやく認めたんです。なぜ6月にいじめを認知した時点で伝えなかったのかと学校に問いただすと、『「いじめ」という言葉は使わずに伝えていた』と言われました。とはいえ、学校がいじめを認知した後も、暴言・暴力は止まず、Aは2学期の途中から学校へ行けなくなったのです」

 筆者がいじめの問題を取材していると、当事者の子どもや保護者が「いじめ」という言葉を使わなかったという理由で「いじめ」と認定しない学校や教育委員会が多くある。しかし、Aくんの学校の言い分は、「いじめ」という言葉は使っていないが、「いじめ認定」について保護者に説明はしていた、というものだ。