「階段から突き落とされそうになった」ことなどはいじめと認定されたが…

 しかし保護者にしてみれば、学校が「いじめ」という言葉を使わない状態では事態をどう認定され、どんな対処が取られるのかは曖昧でわかりづらい。「いじめ」という言葉を明示しなかった学校の対応には落ち度があると言わざるを得ない。

 10月に「いじめ」としての対処が始まっていることを知ったAくんの母親は、いじめの疑いがある数十件についての調査を望んだが、翌年2月に作成された報告書では以下の6つの行為が「いじめ」と認定されるに留まった。

1. BがAくんに対して「死ね」という言葉を繰り返した。
2. BがAくんに対してお腹をパンチしたり、ちょっかいをだしてきたりした。
3. 運動会の練習中にBが使用していた太鼓のバチがAくんにあたった。
4. Aくんがトイレに入っている際に、Bがドアを叩いたり、外側からドアを押さえたりした。
5. プラネタリウム学習の際、鉄道博物館駅の階段でBに突き落とされそうになった。
6. 図工の時間、Bが振り上げた小さな箒の先がAくんの顔に軽く当たってしまった。

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 調査開始当初、学校は「いじめと欠席日数(不登校)は関係ない」といじめと不登校の因果関係を認めていなかったが、後に「Aさんは不安が残ったまま学校生活を送った結果、適応障害と診断され、登校することができなくなり、(中略)相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがある」(校内いじめ対策委の報告書)と不登校との関係も認めた。

写真はイメージです ©AFLO

 しかしAくんの母親は内容が不十分だとして第三者による調査委員会の設置を求めた。

「12月に校長から『今回のいじめは重大事態と同様として捉えている』と伝えられましたが、重大事態としての調査はされませんでした。Aは全部で数十件の暴力や暴言の被害を受けています。授業中に殴られた際には警察に被害届を提出し、傷害で受理されました。その時は警察が学校まで実況見分にもきたのですが、報告書では軽微なもの6件しか認定されていません」

 Aくんがいじめを受けていたことが学校に認知され、調査が始まってからも、いじめそのものに対して効果的な支援はなされず、結局Aくんは12月6日から翌年の3月9日までのほとんどの期間不登校になってしまったのだ。