ここで、「あれ、海外には酒類の持ち込み制限があるんじゃないの?」と思った方もおられるだろう。鋭い。海外から入国する際に、「酒類の持ち込みは1リットルまで」とか、「750ミリリットル瓶2本まで」などの制限をほとんどの国は課している。
ところが、外交の世界には秘密道具があって、「外交行嚢」というものがあるのだ。これは世界共通で、大使館貨物である外交行嚢は、航空会社もチェックできないし、税関も審査できない。荷物検査を受けることもない。いっさい手出しできないのである。なので、必要なだけウイスキーをそこに詰め込み、持ち込むことができるのだ。
余談になるが、厳格なイスラム教を奉じるいくつかの国では、酒類の持ち込みは一切禁止されている。ところが、外交官は外交行嚢を使えるから、大使館や総領事館にはウイスキーやワインを持ち込み、置いておくことができる。だから、在留邦人がパーティーなどで大使館に招待されると、現地ではめったにありつけない酒に行列ができたりする。サウジアラビアなどはことに厳格で、密売酒を探すのも難しいから、リヤドやジッダの在外公館のパーティーでは、何度もグラスを持ってなみなみと酒を注いでしまう日本人もいたりする。
私の赴任先のA国はイスラム教国ではなかったし、どちらかというと酒類の消費は活発なほうだったから、ジャパニーズ・ウイスキーの効果は高かった。それに比べると、日本酒や焼酎はあまり好まれなかったが、最近は「SAKE」のブランド化も進んでいるから事情は異なるかもしれない。
もうひとつのキラー・コンテンツ
もうひとつのキラー・コンテンツのポケモングッズは大して値の張るものではなかったが、特にカウンターパートに小さな子供がいると、効果は絶大だった。おそらく、家庭で「素敵なパパ、ママ」を演出するのに一役も二役も買ってくれたのであろう。ひとたび渡せば、「次に一時帰国するときにまた買ってきてくれないか」と頼まれるほどだった。
地味に見えるかもしれないが、情報収集というのは、こうした努力の積み重ねで出来上がっている。どれだけ高価な物を渡そうと、高級レストランで会食しようと、相手に疑念を抱かれてしまえば何の意味もない。私も親しくなったカウンターパートとはそういう場を共にすることもあったが、これは信頼関係あってのことだ。絶妙な「入り口」を見つけ、そこからネットワークを張っていくのが、腕の見せ所である。
