現地における情報収集
たとえば現地警察や軍、情報機関と連絡を取り、テロリストや犯罪者の情報を得る。どの地域に犯罪が集中しているか、といった情報や、日本人を敵視するような過激派組織やイデオローグがいないか、といった情報の収集に努める。
専門家を探して話を聞くこともある。大学などの研究者だけでなく、世界各国の兵器情報が載る年鑑の発行元などにアプローチしたりもする。予算もなければ、これ以上の活動を幅広く在外公館で行う義務もないが、できうる範囲で情報を収集している。
不審な日本人がいないか追跡することもある。1970年代に連続企業爆破事件を起こした過激派組織「東アジア反日武装戦線」のメンバーだった桐島聡が病死したと、2024年1月に大々的に伝えられたが、彼も海外に逃げているとみられていたため、情報提供を求める対象だった。このほか、日本赤軍関係者、凶悪事件の容疑者などの情報も集めた。
私の場合、ラッキーだったのが、キャリア出身のやかましい「上官」が、赴任国にいなかったことだ。警察庁にキャリア採用されて出向している人々は、情報収集こそが自分たちの役割なので、情報収集と人脈構築に精を出している。それはそれで結構なのだが、都道府県警などから出向している領事を格下に見るケースが少なくないため、情報収集にいちいち口を突っ込んだり、禁止する人もいる。私の場合はこうした人がいなかったため、自由にふるまうことができた。
ジャパニーズ・ウイスキーをプレゼント
情報収集のためにカウンターパートと会う際に、プレゼントを渡したり、少額の現金を渡したりすることもあるが、それらの予算はいわゆる「外交機密費」で賄われる。どれだけの金額を使えるかについては、その在外公館の大使が決裁する。
そこで、私がまずしたことは、どんな土産物がウケるかというリサーチだった。その結果、私が割り出した「テッパン」のお土産品は、ジャパニーズ・ウイスキーとポケモングッズだった。今でこそ「山崎」や「響」はグローバル・ブランドとなったため手土産にするには高嶺の花になってしまったが、当時はそれほど高価でなく、品質も安定しているため、酒を飲む人には大変喜ばれた。