スパイやテロリストの行動を追尾し、不正な情報漏出や破壊活動を防ぐ「外事警察」と呼ばれる警察部門が存在する。中でも、警視庁の公安部外部課はドラマ『VIVANT』(TBS系、2023年7月~9月放映)に登場したことでも注目を集めた。 

 ここでは、警視庁公安部外事課のOBであり、『VIVANT』の公安監修者を務めた勝丸円覚氏が「カウンターインテリジェンス」の世界について明かした『公安外事警察の正体』(中央公論新社)より、一部を抜粋して紹介する。

 アフリカのとある国の日本大使館に赴任が決まり、『VIVANT』で描かれたように海外での任務、つまり在外公館警備対策官の職に就くこととなった勝丸氏。その仕事内容とは——。(全4回の4回目/最初から読む)

ADVERTISEMENT

◆◆◆

渋滞狙いの強盗とテロ

 大使をはじめとする移動ルートを設定し、安全対策を講じるのも、警備対策官の職務である。

 日本と違い、アフリカの多くの国では、車というのは犯罪者にとって非常に魅力的なカモだ。どの国でも大抵そうだが、ひとたび渋滞にはまるとたちまち物乞いに囲まれる。窓をノックしてくるくらいならまだいいほうで、ひどい場合には叩き割らんばかりの勢いで叩いてくるし、聞くに堪えない罵声を浴びせてくることもある。

 渋滞狙いの強盗も多い。「スマッシュ・アンド・グラブ」という、南アフリカやナイジェリアで有名な手口があり、渋滞にはまっている車の窓をハンマーや石などで叩き割り(スマッシュ)、目立つ金品をつかみ取っていく(グラブ)。車の中でスマホやタブレットを操作していたり、目立つところにブランドバッグを置いていたりすると、そういう目に遭いやすい。

 2023年には、ほんの少し開けていた窓からいきなり手を突っ込まれて携帯電話を奪われた日本人男性が、取り返そうと車を降りたところ逆に集団暴行を受けて殺害されるという事件が、アフリカのウガンダで起きている。