なぜリスクプレミアムが発生するか?

 なぜリスクプレミアムが発生するのだろうか? その理由を、簡単な数値例で説明しよう。

 いま、500万円の貯蓄を持っている人がいるとする。その人に、2つのチャンスが提供されたとする。

 第1のチャンスを選べば、500万円が確実に550万円になる。だから、収益率は10%だ。

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 第2のチャンスでは、収益に不確実性があり、2分の1の確率で資産が4500万円になるが、2分の1の確率で0円になる。平均的な収益は3500万円であり、平均収益率は700%だ。

 では、人々はどちらを選ぶだろうか? 多くの人は、平均収益率が低いにもかかわらず、第1のチャンスを選ぶだろう。なぜなら、第2のチャンスを選ぶと、資産が0になってしまう危険があるからだ。そうなった場合には生活が立ち行かなくなり、極めて困難な状況に陥る。そうした状態は避けたいと、多くの人が考えるだろう。

 つまり、第2のチャンスで資産が4500万円に増える可能性があることは魅力だが、それよりも、資産が0になる事態を避けたいと考えるだろう。経済学では、このことを「限界効用が逓減的である」と表現する。

 ここで、第3のチャンスが提供され、それは2分の1の確率で資産が900万円になるが、2分の1の確率で200万円になるものだとしよう。

 この場合の平均的な収益は100万円で、平均的な収益率は20%だ。この場合には、資産がゼロになるという最悪の状況は避けられる。そのため、多くの人々は、第3のチャンスは第1のチャンスと同じものだと評価したとしよう。

 その場合、収益率が10%でリスクのないチャンスと、平均収益率が20%でリスクのあるチャンスが同じように評価されていることになる。平均収益率の差である10%は、リスクを取ることに対する報酬だ。これを「リスクプレミアム」という。