どの程度のリスクを取れるかは、人によって違う
リスクと平均収益率のどのような組み合わせがよいかは、年齢や生活の余裕度、貯蓄額など、様々な条件に依存する。いちがいに、高リスク高収益が望ましいとは言えない。
どの程度のリスクを取れるかは、個人の事情によって違う。年齢が若ければ、損失をこうむっても、後で取り返せるかもしれない。しかし、高齢者になっては、取り戻すだけの時間の余裕がないかもしれない。
一般に、高齢者はより安全を重視すべきだろう。老後のための貯蓄もそうだ。余裕があれば、その余裕の部分をリスクの高い投資にまわすということは考えられるが、基本は安全資産を保有する必要がある。
借入で実物資産を購入すれば?
預金などの名目資産の保有額を、減少させるだけでなく、さらに進んでマイナスにしたらよいという考えもある。つまり、借入をして投資をするのだ。個人であれば、住宅ローンを借りてタワーマンションに投資するといったことだ。
平均的に言えば、借入をして実物資産に投資すれば、利益が得られる。なぜなら、実物資産の収益率はローンの利率よりも高いからだ。
企業は、銀行借入や社債の発行で得た資金を実物資産に投資しているので、利益を得られる。その株主も、この利益の一部を得られる。
ただし、これは平均的にそうなるということであって、個々の場合を見れば、こうした投資のすべてが利益をもたらすわけではない。場合によっては損失が発生する場合がある。その場合には借り入れを返済することができなくなる。
企業の利益はさまざまな要因によって影響される。だから、すべての企業やすべての株主が、あらゆる場合に、必ず利益を得られるわけではない。
個人が住宅ローンという名目負債を負って住宅という実物資産を購入する場合も、購入した住宅がどの程度値上りするかは、地域や住宅の種類などによって大きく異なる。そもそも、値上がりするかどうかさえ、定かではない。仮に値下がりすれば、住宅ローンを返済することができなくなるかもしれない。
このように、貯蓄から実物資産投資に移行することが、どんな場合も望ましいことであるとはいえない。