意外と危うい投資マネーの世界

 だが投資マネーという世界は意外と危うい存在でもある。海外からみて安いといっても、その原因の多くは円安によるものだ。利上げにより円高に振れれば、この理屈は崩壊する。もちろん、相変わらず、日本の東京がニューヨークやロンドンに伍していくだけの経済力を今後も発揮し続けられるかやや心もとなくなっていることも気になるだろう。

 パワーカップルが多い大企業社員を中心にインフレで賃金も上がるだろうが、わずか数パーセント年収が増えたところで、高い所得税率と歯止めが利かない社会保障費の値上げで多くの部分は相殺されてしまう。

 高い確率で発生するとされる南海トラフや首都直下型地震にも怯えなくてはならないのは日本における不動産投資では厄介なポイントだ。

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©takasu/イメージマート

「投資マーケット」と「実需マーケット」の差をどう見るか

 実は実需ベースで考えるならば、新築マンションマーケットの活況は2020年頃には終焉していたはずのことは私も含め多くの専門家が予想していた。だがデフレ脱却を見据えるとして大規模金融緩和をあまりにも長期にわたって継続し続けたために、膨大な外資マネーが日本に流れ込み、マーケットは思わぬ活況を呈することになる。そしてその隙間をぬって個人投資家が多大な不動産投資収益を上げることができたのが現在だ。

 投資マーケットと実需マーケットの差がどんどん拡大しているこれからをどうみていけばよいのだろうか。ただ「山高ければ谷深し」という株式相場の格言があるように、これからのマンションマーケットがどういった展開になるか興味深い。

 最後にもうひとりのマンションデベロッパー役員の言葉を紹介しよう。

「不動産投資マーケットもさ、なんだか平成バブルやリーマンのときとそっくりになってきているんだよね。利回りが低くなりすぎてるからキャピタルゲインをとるしかないっていうところがさ。あの時代と酷似しているんだよ。高くても誰かが買ってくれるから、というセリフ、あの当時もよく使ってたじゃない」