農水省自身、自己の主張を信じていないのではないだろうか?
もともと下がっていた農協の集荷シェア
農水省は、隠しているという根拠を全く示していない。その事実を確認さえしていないのだ。それなのに、盛んにコメは消えた、どこにあるのかわからない、これから調査すると主張している。マスコミもこれを無批判で報道している。
しかし、あるのに隠されて消えているのだろうか? そもそも、もとから“ない”のだろうか?
第一に、多くの業者が農家に買い付けに来ていると言うし、そういった類の報道が多い。しかし、新しい業者が参入することとその業者が隠していることは全く別物だ。“転売ヤー”がいたとしても、その名の通りすぐに転売し売り抜けている。隠し持ってはいない。報道されているのは、自己の店で提供するコメを仕入れにくる外食店だったり、仲間うちで販売する中国人バイヤーだったりで、買い占めのために参入しているというものはない。
そもそも農協以外の集荷業者が参入することは今に限ったことではない。食管制度があった80年代まで農協の集荷シェアは95%もあったのに、さまざまな業者の参入や農家の直販などで、今では農協の集荷シェアは5割に低下している。今回は米価が上がったので、新規参入が多くなっているだけだ。
「消えたコメ」論の無理
第二に、隠しているコメを保管するのに多大なコストがかかる。
温度管理が適切にできる倉庫でないと品質が劣化する。ネズミや虫の被害から守る装置や対策も必要になる。1万トンの保管に1億円の費用がかかる。21万トンなら21億円だ。また、投機目的で売り惜しみしているなら、農家に代金を払ってからコメを販売して代金を回収するまでの期間が長くなり、そのための金利負担が大きくなる。同じく投機でも為替などと異なり実物が伴う投機である。金利や保管料など多くのコストがかかることを覚悟しなければならない。コメを隠していると言われる業者はこれらの費用を負担できる資金を持っているのだろうか?