「プーチンの長いテーブル」のあまりに印象的な構図
ミームとなるのは戦場の出来事だけではない。ロシアによる侵攻開始前後、海外要人や閣僚との会談に臨むプーチン大統領が長いテーブルを使い、会談相手と不自然に長い距離を置いていたことはネットユーザーから奇異の目を集めた。
このことは、プーチン大統領が新型コロナ感染を恐れていたためと推測されているが、あまりに印象的な構図となっていたため、瞬く間に「プーチンの長いテーブル」としてミーム化している。
日本発で広まった「ドネツ川の河童」
限られた地域だけで伝播するミームも存在する。2022年5月にウクライナ東部の都市セベロドネツクの西方で、ドネツ川渡河を試みたロシア軍が大損害を受けた戦闘が起きた際、日本のネットユーザーが「ドネツ川の河童によるもの」という冗談をツイートしたところ、広く拡散されたことがある。
このミームは東欧地域の神話に登場する水の精、ヴォジャノーイと解釈されたイラストが広まったりもした。更には東京スポーツが取り上げるなど、ほぼ日本国内限定でミーム化されている。
ここまで見てきたミームたちは、皆それぞれ生まれた経緯が異なり、結束させるスローガンや象徴となったり、事態を広く知らしめたりと、様々な役割を担っているウクライナ支持側で拡散されているミームだ。対するロシア側も、識別信号だった「Z」マークがミーム化するなど、様々なミームを生み出しており、ミームを自勢力のために利用することに余念がない。
ネット空間も戦場と認識されるようになり久しい。激しい戦闘が伝えられる現実の戦場の裏では、ネットで日々生まれる多様なミームを自発的に取り込み、拡散させ、多くの人々の共感を集めることで自勢力に有利なネット空間を確立するミーム戦も進行中なのだ。
