――あれ、送られたとか教えられたとかじゃなかったんですね。
松田 たまたま私がウクライナ語で検索している時に見つけました。「お、本当にやってるわー」みたいな感じで。「今度ウクライナでチャリティーやりますよ、ザルジニーさんのサイン入りですよ」みたいなのがバーンと出てきて「こっちが欲しいわ」って。
あれも100万円くらいで落札されたそうです。それと、『キエフの幽霊』ウクライナ語版の売上の10%は寄付されるんだったかな。ストーブを空軍基地に送ると聞いています。
『キエフの幽霊』は本当に気まぐれとノリだけでやってて、それをたまたま面白いって言って出版したりなんだりしてくれる人がいて、翻訳をしてくれたり、中継したウクライナ大使館の人たちがすごいんであって、私はなにもやってないんですよね。
「印刷工場がミサイル攻撃を受けて出版が遅れる」ということが
――ある意味、ミーム戦としてウクライナ側に利用されたという側面もあると思いますが、それについてはどのようにお考えでしょうか?
松田 私があの作品に政治的メッセージを込めたんだったら「ちょっとどうなんだ?」という感じもしたでしょうが、そういうのは全然ありませんから。作品は完全に娯楽に徹していますんで、使ってもらうのは構わないという感じで。
国外は意識せず、国内向けとして描いています。もともとは海軍モノがメインで、どうしても負け戦のストーリーが多くなってしまうんですけど、ウクライナ視点で負け戦を描くのも躊躇われますし。
――戦争中の海外での出版にあたって、色々とトラブルもあると思いますが、何かありましたでしょうか?
松田 ウクライナの印刷工場がミサイル攻撃を受けて出版が遅れる、ということがありました。さすがに日本の同人誌としては史上初だと思います、驚きました。
