「原始反射」が何に表れるかは、個人で異なる
コミュニケーションには、原始反射のベースであるモロー反射(編集部注:大きな音を立てたときなどに、赤ちゃんがビクッとして両手を広げて抱きつくような動きをする反射)も深くかかわっています。モロー反射が残っているために緊張と不安が強く、母子分離ができない、ほかの人への不安からコミュニケーションがとれないこともよくあります。
警戒心がなくオープンな子もいれば、母子分離ができず不安な子や人見知りする子もいる。一見すると矛盾しているようですが、原始反射が何に対して表れるかは一人ひとり違います。指導員に対して警戒心がない子は、「大人のほうが安心」と思っている子だったりします。とくに複数の子どもがいる教室の中では、指導員や先生などの大人は、まるでお母さん、お父さんのように自分を守ってくれる存在と映るのでしょう。
また、感覚過敏がコミュニケーションに影響する例もあります。「耳まわりを触ってほしくない」という子がいて、髪をカットするのも大変。耳かきもさせてくれないので、耳垢(あか)がたまっていました。耳を塞(ふさ)いでしまうほどたまっているので、指導員の指示が聞こえないことがありました。
耳鼻科に連れて行ったところ、耳垢がカチカチになっていたそうです。その子は発語も遅かったので、おそらくよく聞こえていなかったのでしょう。耳垢をとって聞こえるようになってからは、発語が追いついてきました。
なお、口まわりの反射は手の反射(掌握反射)ともつながっています。手がちゃんと使えていない子は、発語が遅れるなど、関係が深いといわれています。
「痛かった」と伝えるのが大切
言葉ではなくつい手が出てしまうのも、反射のせいかもしれません。怖い、不安、緊張を感じたとき、原始反射の中の反応の1つ、「戦う(fight)」が起き、「生命の危機」を感じて、無意識に手が出てしまうこともあります。
先ほどもお伝えしたように、空間把握が苦手なATNRが残っていることによる“距離感が近い”お子さんの場合、距離が近いことで、パッと手が出て押してしまうこともあります。これらモロー反射が出てしまったため、といえるでしょう。同時に、力加減がわからないこともよくあります。トントンと軽くたたいているつもりが、ドンドンと強くなってしまうのです。