成長には個人差があると知っていても、親の悩みは尽きない。“発達の遅れ”に気付いた親は、何をすればいいのか。『楽しく遊びながら子どもの「発達」を引き出す本』(青春出版社)を書いた松本哲さんは「乳児期の原始反射が消えていないことが原因かもしれない。子供の発達に悩んでいる親には、ぜひ家でやってほしい体操や声かけがある」という――。(第2回)

※本稿は、松本哲(著)、本間龍介(監修)『楽しく遊びながら子どもの「発達」を引き出す本』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Yagi-Studio ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

空間把握が苦手な子は「距離が近い」

コミュニケーションの問題というと、上手にしゃべれない、滑舌(かつぜつ)が悪い、言葉が出ないといったトラブルがその代表的なものです。これらには、口まわりの反射がかかわっているのは想像できると思いますが、実はそれだけではありません。

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原始反射(編集部注:主に乳児期に見られる反射。成長とともに運動機能が発達していくにつれて自然に消えていく)の中のATNRもコミュニケーションにかかわってきます。ATNRとは第1回でも触れた通り、非対称性緊張性頸反射(ひたいしょうせいきんちょうせいけいはんしゃ)といって、頭を左右どちらかに向けると、向けた側の手足がまっすぐ伸びて、反対側の手足は内側に曲がってしまう反射です。これが残っている子どもは、空間把握が苦手なので人との距離感がとりにくく、距離がとても近かったりします。

教室で走っていると、指導員にぶつかってくることもあります。明らかにぶつかっているのに、本人はまったく気づかないこともよくあるので、子どもにわかるように伝え、認識させてあげる必要もあります。

物理的な距離だけでなく、コミュニケーションにおいても、人との距離が近い、つまり、人に対する警戒心があまりない子も多いのです。警戒心がないと、結果的に、物理的な距離も近くなります。

たとえば、初めて会った指導員に対しても、「あれ、前に会ったことあったっけ?」というくらい、とてもオープンです。オープンなのは悪いことではありませんが、距離が近いことによってトラブルが起こることもあります。