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嘘をつき始めると人間はどうなる?
「私の小説を『イヤミス』と評していただくことがありますが、その不快感は読者の中にある正義感の裏返しであり、そこを刺激したいと思っています。『なぜこんな気分が悪くなる人ばかり描けるんですか?』と聞かれますが、よく人を観察することに尽きます。例えば、病院に行くと、看護師さんに怒鳴り散らしている患者さんがいる。私は、不快感を覚えるより先に、なんでこの人はこんな行動を取るんだろうと興味を持ってしまいます。そうやって何人かを足していくと、胸の悪くなる人物ができあがります(笑)」
騙し騙されのコンゲームも読みどころだ。誰かが誰かに嘘をついている世界は、現実の映し鏡か。
「この小説では、私利私欲で動く人間を描こうと思いました。嘘をつきはじめると、人は一貫性を持ち続けられない。その結果出てくる人物が『全員裏切り者』になっていました(笑)。そんな世界で信頼できるものは何か。自分なりの答えをラストに据えました。お楽しみください」
伊岡瞬さんプロフィール
1960年東京都生まれ。広告会社勤務を経て、2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をW受賞しデビュー。16年『代償』で啓文堂書店文庫大賞を受賞し、同書は50万部超の大ヒット作となる。他の著書に30万部を超えるベストセラー『悪寒』のほか『本性』『冷たい檻』『不審者』『祈り』『赤い砂』『白い闇の獣』『残像』『清算』『水脈』『翳りゆく午後』など。
