疑いなく正しいとされがちな、〈人と人とのつながり〉。SNSを始め、さまざまなコミュニケーションツールの普及によって、さらに〈つながり〉重視の傾向は強まっている。社会学者である著者(故人)は、10年以上も前に、過剰な〈つながり〉がもたらす息苦しさに目を向け、〈人と人とのつながり〉の常識を丁寧に問い直し、若年層向けの新書にまとめた。その本が今、大きな脚光を浴びている。
「出版当時の若者に向けて書かれた本ではありますが、分析されている村社会的な人間関係は、昔も今も日本社会に普遍的なもの。ですから、『みんなと仲良くしなければいけない』といったような人間関係の常識を疑う本書の提案は、現在も古びていないと思います」(担当編集者の吉崎宏人さん)
長い年月をかけてじわじわと売れ続け、5万部に辿り着こうかという2017年初頭に、突如売れ行きが加速。原因不明のその現象を同年6月に朝日新聞の文化欄が報じたことで、爆発的な勢いが生まれた。今年春には、日本テレビ系列の人気番組「世界一受けたい授業」で又吉直樹さんに取り上げられ、ついに20万部超えのベストセラーに。
「主要な読者層である中高生だけではなく、社会人から高齢者まで幅広く読まれています。集団で生じる人間関係の難しさは、年齢を問わないのでしょう。毎年、五月病の流行る時期になるとよく売れる点も特徴的ですね」(吉崎さん)
2008年3月発売。初版8000部。現在26刷23万6200部