軍事のプロかつ、アニメファンの識者3人が宮崎駿作品の魅力について討論。なぜ宮崎は他のクリエイターと一線を画すのか? 新刊『ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

宮崎駿監督 ©getty

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機体は汚れているほうがかっこいい

小泉 宮崎さんが、「資料は見ろ。しかし資料どおりに描くな」言うのって、すごいわかる。いろいろなものを見にはいきたいんだけど、そのものにはあまり興味がないんですよ、僕は。実物を見ている間は意外と冷めていて。いろいろなものを見にいった後に、自分の脳内で再構成した世界で遊んでいるのが一番楽しくて、その感じはわかるんですよね。

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太田 小泉さんはけっこう「宮崎的」なのかもしれません。

小泉 宮崎さんはクリエイターだから、脳内で楽しんだものを出力しろということを言っているんじゃないかという気が。

太田 そうそう。宮崎さんも言っていますけども、航空機の博物館で、実物を見るとこうなんか……。

小泉 思ったのと違うみたいな。

太田 なんだかね、剥製を見ているみたいな感じになって……。

高橋 それはわかるな。

小泉 別のエピソードですけど、アニメーターが鳥の動きを正確に再現したら、宮崎さんが「違う!」と。でも鳥の飛び方はこうですよって言ったら、「鳥のほうが間違ってる!」みたいなキレ方をしたって(笑)。宮崎さんの中にたぶん正解があるんですよね。

高橋 宮崎アニメーションとして動かすってことを考えると……。だから『君たちはどう生きるか』の青サギは……。

小泉 僕、観てないんですよ。

太田 あ、観てないの?

小泉 僕は流行りものを数年待つという天邪鬼なアレがあり……(笑)。戦車出てきます?