「殺人医師」――命を救うはずの医師が、家族全員を殺害し遺棄したこの事件は、世間を震撼させた。
野本の逮捕を受け、筑波大は異例の会見を開いた。在学する学生の逮捕ならともかく、卒業生の犯行について出身大学がコメントすることは珍しいが、野本が卒業後に研修医として筑波大附属病院に勤務していたことや、社会的反響を考慮しての対応だったのだろう。
医学専門学群副学長の三井利夫教授(当時)は会見で「野本医師であってほしくない思いが強い。学生らも強烈な印象で受け止めているだろう」と語った。逮捕されてもなお、野本の犯行が信じられないという口ぶりではあったが、野本自身は早々に犯行を自供し、刑事裁判は粛々と進んだ。
医師としての野本の評判は決して悪いものではなかったとされ、裁判では医学部時代の同級生などから4000通の減刑嘆願書が集まった。無期懲役判決が確定した野本は間もなく、服役30年の節目を迎える。
「心の砂漠地帯」のイメージは払拭されているが…
90年代につくばで起きた2つの殺人事件は、都市伝説が流れた80年代のイメージとは異なる「リアル」の衝撃があった。しかし2000年代に入り、TX開業による交通インフラの強化、また新駅周辺の再開発により、殺伐とした「心の砂漠地帯」のイメージは払拭されている。
つくば市の人口は増加しており、10年後の2035年には水戸市を追い抜き、県内最大都市になる見通しだ。
この春より悠仁さまの入学を受け入れる筑波大、そして警護を担当する皇宮警察、警視庁、茨城県警は、卒業までの4年間、絶対に事件・事故を起こしてはいけないという重いミッションと向き合い続けることになる。
あえて東京から離れた筑波大を選択した悠仁さまにとっても、「試練の4年間」となることは間違いない。

