「何でこんなことをやったんや?」
警察官も驚いた! 盗撮魔たちから「聖地」と呼ばれたターミナル駅で、盗撮を働いていた人物の「意外な正体」とは? そして逮捕後にわかった「盗撮を超える悪行」の数々とは? ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の1回目/続きを読む)
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「盗撮魔たちの聖地」で捕まった“意外な人物”
盗撮魔たちに「聖地」と呼ばれているターミナル駅のエスカレーターがある。距離がことのほか長く、常に人が密集していて目立ちにくいからだ。
警察はそこが盗撮のメッカであることを把握していた。その日も精鋭の捜査員たちが学生の下校時間に合わせて張り込んでいた。
そこへ現れた不審な男。エスカレーターを上ったかと思えば、また降りてきてスマホの画面を確認している。女子高生にそれとなくすり寄り、スカートの下で不審な動きをしている。
「マル対だ。目を離すな」
男は何度目かの動きで、女子高生にピタリとすり寄り、エレベーターに乗ったところで、捜査員たちもその後ろに続いて乗り込んだ。
男の動きに注目すると、やはりスマホを取り出し、女子高生のスカートの下に差し込んだ。そのまま男は微動だにせず、エスカレーターを降りる直前になって、慌ててスマホを引っ込めた。
男がエスカレーターを上り切った時点で、捜査員たちが男を取り押さえ、身柄を確保した。
「警察や、動くな!」
周りは騒然。被害に遭っていた女子高生は、女性警察官の誘導を受けた。男のスマホに写っていたのは、間違いなく女子高生のスカートの中を逆さ撮りしたものだった。
「私のものに間違いありません」
男は迷惑行為等防止条例違反の疑いで事情聴取を受けることになった。
だが、素性が分かって、警察の方が驚かされることになった。地元の大学病院耳鼻咽喉科に勤める現役医師だったからだ。
山下静雄(当時43)。医師としては優秀で、勤務態度は真面目。黒ぶちメガネをかけた優男だった。
「何でこんなことをやったんや?」
「……」
黙秘する山下。盗撮事件の場合、初犯ならば、起訴されることもなく、厳重注意を施されて釈放されることも珍しくないが、この男の場合は違った。
スマホの中身を解析したところ、盗撮の常習者であるばかりではなく、手術中の女性患者たちを写したとみられる動画が山ほど出てきたのだ。
そこは手術室と思しき場所で、女性たちは全員が手術着姿。昏睡状態のまま、山下に導かれて胸や陰部を露出し、顔も含めて撮影されていた。

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