デリヘルで働く中で、大きなトラブルはなかった。当時はSNSを使って発信する女性はまだ多くなく、地元の風俗情報サイトに写メブログの日記を書いて、宣伝・集客をする形が主流だった。

やめるきっかけ

「ブログで『今海にいる』と書いたら、後日、お客様から『あの日、県内の海を全部探したよ』と言われて、びっくりしたことはありました。それでも、特定のお客様にストーカーのようにつきまとわれることはありませんでした。

 匿名掲示板の爆サイに色々と書かれて、凹んでいる子は多かったです。私も見てしまい、凹んだことはありましたが、『見ない』と決めて、距離を置きました。

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 トラブルといえば、性感染症ですね。クラミジアや淋病をはじめ、ヘルペスやカンジダにもかかりました。お店全体で検査はしっかり行っていましたが、お客様や他の女の子がかかっているのを耳にすることもありました。何度も性感染症になって休んでしまうのは困るなと、現役時代の後半は、病院で処方してもらった抗生物質と同じものをネットで買って定期的に飲んでいました」

 県内にあるグループのお店をほぼすべて掛け持ちして、5つから7つの源氏名を使い分けて働いていたが、30歳になり次第に体力の限界を感じるようになってきた。

 そんな時、子宮頸がん検診を受けた際に「精密検査が必要」という結果が出たことが、デリヘルの仕事をやめるきっかけになった。

写真はイメージ ©getty

「がんになる前の『頸部軽度異形成で定期的な経過観察が必要』という診断でした。この仕事をしていることで、性感染症には他の人よりも多く感染しているし、玩具なども使っているので、知らない間に身体に負担がかかっていたのかもしれない。一生できる仕事ではないし、そろそろやめる時期なのだろうな、と感じました。

 お店のスタッフに『卒業したい』と伝えたら、『本当に?』と尋ねられたけれど、無理に引き止められるようなことはありませんでした。お客様の中には、卒業の日に5万円をくれた人もいました」