尹錫悦大統領が宣布した非常戒厳(戒厳令)を巡り、韓国では混乱が続いている。「文藝春秋」では前駐日韓国大使の尹徳敏氏と、前日韓議員連盟幹事長の武田良太元総務相が対談(政治ジャーナリストの青山和弘氏が司会)。尹大統領の素顔や戒厳令に関する“秘話”の数々が明らかになった。

前日韓議員連盟幹事長の武田良太元総務相 ©文藝春秋

「これは韓国ドラマか?」と思った

 武田氏が尹大統領と初めて会ったのは、2022年5月の大統領就任式の前夜に行われたパーティだ。その後、面会を重ね、何度も酒席を共にした。だが、戒厳令の一報には衝撃を受けたと語った。

「テレビのニュース速報を見た時、『これは韓国ドラマか?』と思ったくらいですよ。ところが、画面に映るのは紛れもなく尹大統領本人。『あれ? 何が起きたんだろうか』というのが第一印象でした」(武田氏)

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 昨年7月まで駐日韓国大使を務めた尹氏も「一言で表現するのは難しいですが、最初に浮かんだのは、韓国語で『アンタカッタ』、つまり、『切ない』という感情でしたね」と語り、こう続けた。

前駐日韓国大使の尹徳敏氏 ©文藝春秋

「戒厳令というのは、とても重いんですね。かつての軍政時代を想起させますし、それこそ北朝鮮が攻めてきたとか、そういう軍事的な衝突でも起きない限りは出してはいけないもの。大統領職を懸けて決断する局面だったとはとても思えませんでした」