2月24日で開戦から丸3年が経過したウクライナ戦争。2月12日にはアメリカのトランプ大統領が、ロシアのプーチン大統領と停戦に向けた協議開始に合意し、新たな動きが見え始めている。
東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠氏と、防衛省防衛研究所主任研究官の長谷川雄之氏の対談から、北朝鮮によるロシア支援の現状について語られた一部を紹介します。
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北朝鮮からロシアへの武器輸出
――ロシアがウクライナ侵攻で使用している砲弾の6割が北朝鮮製だという情報もあります。戦費はロシアが負担していても、北朝鮮の砲弾がロシアを支えていると言っていいのでしょうか。
小泉 そう思います。今ロシアは年間1000万発大砲を撃つと言われていますが、ソ連時代の備蓄は使い果たしていますし、砲弾の新規生産能力は300万発から、多くとも450万発と言われています。ですから、残りの6割から7割はどこかから持ってくるしかない。その「どこか」が、現状では北朝鮮になっていると言えます。具体的な供給数は、2023年は「およそ500万発」と韓国の国防大臣が語っていて、昨年も同じくらいではないかと思います。
北朝鮮がロシアに武器を供給していることは、私自身も衛星画像で見ていて、ルートや受け渡しが行われる場所もだいたい分かっています。荷降ろしは、以前はウラジオストクの近くにあるドゥナイというエリアで行われていました。これは面積の狭さもあり、はっきり言って丸わかりだったんです。でも、最近はボストチヌイという、より大きな商用のターミナル港でコンテナの受け渡しを始めたので、他のコンテナと区別をすることが難しくなってきています。そこで、代わりに、積み出す方の北朝鮮側を見るようになりました。羅先(ラソン、北朝鮮の北東部)のターミナル港にいつも違ったロシア船が来て、武器を受け取っています。個人の追跡ではわからないことも多いのですが、アメリカや韓国、NATO諸国、日本も当然ルートはチェックしている。どれくらい北朝鮮から武器が渡ったかは、かなり正確に把握されていると思います。
――ウクライナは、これまで北朝鮮からコンテナ2万個分の弾薬と武器がロシアに送られたと言及しています。その中身は、500万発を上回る砲弾、また「火星11」系列の新型弾道ミサイルが100発以上含まれているとしていますが、そもそも、なぜロシアと北朝鮮はこのような形で接近してきたのでしょうか。
小泉 ロシアが北朝鮮抜きでは、今のような規模の戦争ができなくなったからです。もともと戦争には、他国の援助が必要となりますが、北朝鮮以外の国からの援助はあまり芳しくない。たとえばイラン。戦争の初年からイランに弾道ミサイルの提供を求め続けているのですが、これは断られ続けています。
一方でインドは、ロシアに弾薬をこっそり売ってはいるのですが、ウクライナに対しても弾薬を売っている。お金が手に入ればそれでいいという、非常に節操のないことをしているのがインドです。