運営会社が建てたホテルは廃墟となり心霊スポットに
こうした地面の切り売りは、すでに別荘ブームが去っていた1980年頃まで続けられていた。一般の宅地と変わらない面積の区画もあるが、その別荘地を取り囲むように、おびただしい数の狭小地が残されている。それら狭小地のほとんどが、かつて会員制クラブとして運営されていた時代のテニスコートや、元々共用設備があった敷地だ。
僕は現地を訪れてみたが、今ではソーラーパネルなどが置かれているだけとなっている。各区画の地権者が個人的に活用している模様は見られない。ファミテックNIKKOとは無関係と思われる事業者によって事実上、占有状態になっているところもある。
同別荘地内には今も「ファミテック」の名を冠した宿泊施設があるのだが、これは当初の開発業者とは別法人であり、当該の宿泊施設も会員制で運営されているものではない。
別荘地内には、旧ファミテックNIKKOの運営会社が建築したホテルの廃墟が残されているが、運営会社であるファミテックホテルズジャパンはすでに破綻。その後競売で取得した春日部市の法人も休眠状態で、ホテルは心霊スポットとして有名になってしまい、侵入者によってひどく荒らされている。
当然、数坪程度しかない狭小地では、いくら高度成長期やバブルの頃でも活用のしようがない。
ファミテックNIKKO内の一般の別荘区画には、数は少ないとはいえ数戸の別荘が建てられている。典型的な無管理別荘地とはいえ今もわずかながら住民がいるのに対し、細切れとなった区画は、僕が確認した登記では、分譲後に改めて売買が行われている形跡のものはなかった。
この面積では固定資産税も免税点未満であろうから、北海道の原野同様、所有していても金銭的な負担はない。そのためかどうか、分譲から半世紀近くが経過しているにもかかわらず、相続登記が行われている登記も見当たらなかった。
更地のまま放置された投機型の別荘地
ところで、ファミテックNIKKOの開発業者である日光商事が打ち出した「小さな投資で大きく楽しめる会員制別荘」なるコンセプトは、実際のところは単に会員権を売るための方便に過ぎない。
こうした分譲地は、名目上は別荘地でも、実態は投資商品としての性格が色濃いものだった。それはファミテックNIKKOに限らず、また会員制別荘であるか否かにかかわらず、当時の投機型分譲地の多くは似たようなもので、「〇年後に飛躍的に発展する」「大きな開発計画がある」などといった、根拠に乏しい大風呂敷を広げて顧客を勧誘していた。
そうした分譲地で、実際に建物が建てられたのはわずか数戸、多くても全区画のうち家屋は2割あるかないかで、ほとんどは分譲当初から今に至るまで更地のままである。