更地の大半は、実際にそこに別荘を建てて利用することを目的として買われたのではなく、別荘地としての発展を期待し、値上がりを見込んで投機的に買われた区画であった。千葉県北東部などの限界ニュータウンとまったく同じ構図である。

 高度成長期以降に開発された別荘地では、割合の差はあれ、おおむねどこでもそのような区画が見られる。日光市はこのような投機型分譲地が数多く残る自治体の一つである。

 これらの分譲地は、ファミテックNIKKOの別荘地も含め、結局は長期的な展望などないまま乱雑に分譲されるばかりの、言わば「売りっぱなし」に過ぎなかった。

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 完売しても利用者がほとんどいないため発展とは程遠く、せいぜい日光宇都宮道路が開通したのみ。そのほかは当時も今もほとんど変わらない光景である。

 多くの土地購入者は、200~300万円ほどの金額を支払って土地を購入したものの、別荘ブームが収束し期待した通りの値上がりは発生せず、売るあてもなく所有しているだけの状態が続いていた。

 よくある誤解として、このような投機目的の分譲地は、バブル崩壊後の地価下落によって放棄が進んでいったと考えられがちだが、実際には、バブル時代の地価高騰の影響もほとんど及ばず、その需要は限定的だった。80年代半ばの時点で、こうした投機目的の別荘地の荒廃を伝えるメディアもあった。

地権者に売りつけられたリゾートクラブ会員権

 そんな中、80年前後頃から、日光市周辺の投機型分譲地の地権者に対し、「大和観光建設」の社員を名乗る営業担当が盛んに訪問販売を行うようになる。

 営業担当いわく、「地権者であるあなたが所有している日光周辺で大きな開発計画があり、高値で売れる見込みがある。しかし、ただ売るだけでは利益に税金がかかってしまうので、税金対策として、やはり土地同様に値上がりが見込めるリゾートクラブの会員権を購入してほしい」との勧誘だった。

 見込み違いだった別荘地の処分に困っていた地権者は、この営業担当の口車に乗せられ、リゾートクラブの会員権を購入するものの、約束していた所有地の売却は一向に行われず、多くの地権者は、ただ会員権を買わされるだけの事態となった。中には、土地の売却代金による返済を見込んで、新たに借金をして会員権を購入した地権者もいたという。

 当然、購入者の間からは大きな反発が巻き起こった。甘言を弄してリゾート会員権を売りつけた営業担当は元暴力団員で、別件の詐欺容疑で逮捕。販売会社である大和観光建設は、会社が関与しないところで営業担当が勝手に行ったものとして責任転嫁し、弁済もせず幕引きを図ろうとする。

 しかし相談を受けた弁護士の調査によって、被害者の数は数百名近くにのぼり、会員権の販売に関与した営業社員の数も100名を超えていることが判明。会社ぐるみでなければできるものではないということで、ついに被害者が集まって「不正募集被害者の会」が結成され集団訴訟が起こされる事態となった。