1万人のご遺体を見送った経験のある元火葬場職員・下駄華緒さん。各種メディアで火葬場の実態を発信し続けている彼が、火葬場の裏側や仕事の実情を描いたコミックエッセイ『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(竹書房)の第4巻を上梓した。

 火葬場にはどんなご遺体が運ばれ、どのように火葬しているのか。火葬場職員は、ご遺体やご遺族とどのように向き合っているのか。下駄さんに話を聞いた。(全2回の1回目/2回目に続く)

下駄華緒さん ©細田忠/文藝春秋

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バラバラになったご遺体に、小石が混ざっていた理由

――本作では、電車事故で亡くなったご遺体など、事故・事件のご遺体の火葬エピソードが多い印象を受けました。

下駄華緒さん(以下、下駄) 電車事故のご遺体は、「轢死体」というやつですね。僕が実際に担当したご遺体は、身体はバラバラになっていて、ところどころ小石が混ざっていました。

――小石?

下駄 はい。断定はできないのですが、線路上にあったご遺体を拾い集めるときに、近くにあったものなのかな、と。

「小石が混ざったまま火葬場まで運ぶなんて……」と、不謹慎に思う方もいるかもしれません。でも、鉄道の職員さんはバラバラになったご遺体をできるだけ取りこぼさないよう、小石も一緒に拾ったんだろうなって僕は思うんです。

 火葬場職員が事故に関わった鉄道職員さんと直接話す機会はないので、実際のところはわかりませんが。

 

身体がバラバラになっていると、うまく火が当たらない

――電車事故以外にも、事故によるご遺体を火葬したことはありますか?

下駄 もちろんあります。日本全国で事故があるから、火葬場でそこそこの年月働いていたら、いつかはぶち当たることですね。

――事故や事件によるご遺体は、通常のご遺体との違いはあるのでしょうか。

下駄 死因にもよりますが、轢死体のように身体がバラバラになっていたりすると、火葬が難しいことが多いです。

――どうしてバラバラになっていたら、火葬が難しいのでしょうか。

下駄 例えば、頭や顔は骨に覆われていますよね。骨に覆われていると、内臓まで火葬するのには時間がかかります。通常の火葬では、目や鼻などの穴から火を当てることで、火葬時間をできるだけ短縮するんです。

 ただ身体がバラバラになっていると、うまく火が当たらないことが多くて。そういう時は火葬専用の“棒”を使って向きを変えたりして、普段よりも注意しながら焼かないといけません。