イラク水滸伝』が話題の高野秀行さんと探検家の山田高司さん、世界各地の危険地帯を取材してきたジャーナリスト・丸山ゴンザレスさんとの白熱の鼎談。

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山田高司氏(左)、丸山ゴンザレス氏(真ん中)、高野秀行氏(右) 撮影・末永裕樹(文藝春秋)

それぞれの取材テーマの見つけ方

丸山 『イラク水滸伝』もそうですが、毎回よくぞこんな場所とテーマを見つけたな、という嗅覚が高野さんならではです。アフワールのような知られざる地の発見、これ意外にも新聞記事だったんですよね。

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高野 そう。朝日新聞の国際面のトップに出てました。

丸山 全国紙で出ていたのに、現地に行ってみようと反応したのが高野さんだけだったというのが、またすごい。

高野 よくそんなことが起こるんですよ。最新刊の『酒を主食とする人々』も、元ネタは京都大学の砂野唯さんという研究者の方が本を書いてるんです。ジュンク堂書店の文化人類学の棚でたまたま見つけたその『酒を食べる』という本には、エチオピアのある民族の信じられない食習慣が書いてあったんですね。

 よくいろんな人に、「どうやって、あんなネタ見つけてくるんですか?」って聞かれるんですけど、どうもなにも、本屋に本が置いてあっただけです(笑)。

丸山 僕のネタの探し方とも近い気がします。危険地帯の取材だからといってなにも特殊なルートがあるわけではなく、先日「クレイジージャーニー」で放送したエルサルバドルの刑務所も、2年前にBBCの独占でカメラが入ったという放送を見て知りました。後日、別の国の知り合いのジャーナリストから「BBCとエルサルバドル政府の間をつないだのは俺だけど」というのを聞いて、「じゃあお前から頼んでくれないか」と頼んで実現した企画です。

 だから、普通に全世界の人たちと同じものを見ていても、その先に一歩踏み出すかどうかの違いだけなのかも知れませんね。高野さんは、最初から、本を書くための取材なんですか? それとも、ただの好奇心が勝つときがある?

高野秀行氏

高野 ただの好奇心が勝つときが普通によくあって、今回もとにかく隊長と一緒に川下りがしたいっていうシンプルなところからスタートしています。いつも未知に対する憧れと自由に何かやりたいっていうのが渾然一体になっていて、自分でも区別がつかなくなっていますね。まあ結果的に、川下りの話ではなくなったけれども。

山田 イラクは初めてでしたが、南米やアフリカの大湿地には行った経験があったので、湿地帯の旅はかなり大変だぞと言ったんだけど、高野は都合の悪いことは見事に耳を通り抜けてしまう(笑)。