イラク水滸伝』が第34回(2024年度)Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞したことを記念して、著者の高野秀行さんと旅を共にした探検家の山田高司さん、ならびに世界各地の危険地帯を取材してきたジャーナリスト・丸山ゴンザレスさんとの鼎談が行われた。

◆◆◆◆

高野秀行氏 撮影・末永裕樹(文藝春秋)

高野秀行さんと最初の出会い

高野 今日はみなさんお集まりいただき、ありがとうございます。ノンフィクション作家の高野秀行です。 

ADVERTISEMENT

丸山 ジャーナリストなどをしている丸山ゴンザレスです。

山田 高野から山田隊長と呼ばれている老いぼれです(笑)。本書では挿絵を担当しました。

丸山 まずは高野さん、受賞おめでとうございます! 

高野 ありがとうございます。僕と隊長のご縁はすでに本でご存知の方も多いでしょうから、まず最初に丸山くんと僕の馴れ初めを、軽くお伝えしましょうか。最初に会ったのは、もう10年以上前で、丸山くんもまだテレビに出る以前でしたね。

丸山 はい。僕は高野さんの著作を全部読んでいたからぜひ会いたかったんですが、その頃いろんな人が殺到していて、お目にかかるのもハードルが高かったんですね。そしたら双葉社の担当編集の方がちょうど高野さんの探検部の後輩で、「僕は高野さんの『ワセダ三畳青春記』が本当に大好きで、それをお伝えください」って言ったら、「そういうマインドの人だったら大丈夫ですね」とOKをもらって。

高野 なんかえらそうで、すみません(笑)。

「クレイジージャーニー」でまさかの“アヘン”ネタ

丸山 そこで高野さんと初めて会って、すごく刺激を受けたんですね、こういう大人いるんだって。自分もライターとして、どう旅をして、どう書いていくべきかを考えさせられました。

丸山ゴンザレス氏

高野 最近では圧倒的に丸山くんのほうが有名になって、なかなか会えない人になってるじゃない。

丸山 全然そんなことないです。映像畑だからチームで動くことが多く、昔みたいに自由にならないだけで。でも最初、高野さんが「クレイジージャーニー」に出てくれるとは、正直思ってなかったんですよ。

高野 そうなの? お声がけいただいたのは、昔の写真や動画を見せながら体験を話すだけだったし……。

丸山 でもネタが、まさかの『アヘン王国潜入記』の裏話!

高野 テレビでは基本的に、アヘンの話なんて絶対にできないですよね。TBSの法務部や弁護士の方と綿密に打ち合わせしたのを覚えていますが、あれは面白かったですね。

丸山 今日は『イラク水滸伝』がメインテーマですから、あらためて山田隊長と高野さんの関係性もぜひ。