成功を夢見て若くして台湾からアメリカに渡ったジェリー・シューは、やはり台湾出身の伴侶を得て3人の子を育てあげ、エンジニアとして定年まで勤め上げた。ようやくアメリカで悠々自適の日々を過ごすかと思いきや、わけあって現在はひとり台湾に暮らしている。なぜならばジェリーは、ある日かかってきた1本の電話をきっかけに、98万8000ドルという大金を失うことになったからだ──。
3月20日に公開される映画『ジェリーの災難』は、初老の移民男性・ジェリーが巨額の詐欺被害に遭った体験をもとに自ら脚本を書き、さらには主演をも務めた作品。すでに各国の映画賞を多数受賞した話題作でもある。
初老の台湾系移民に降り掛かった災難
物語はすべて実話に基づいている。
アメリカンドリームを追い求めつつも慎ましく暮らすことを身上とするジェリーは、自らを「退屈な男」と認めつつも長年にわたって倹約に努め、資産を蓄えてきた。だが芸術家肌で享楽的な妻とは離婚し、3人の息子たちはそれぞれ自立して別居。「もっと人生を楽しめばよかった」と後悔しつつも、ジェリーは独り淡々とした日常を過ごしていた。
ある日、ジェリーのもとに“中国警察”から緊急の電話があり、国際的なマネーロンダリング事件の捜査で自身が第一容疑者になっていることを知らされる。このままでは逮捕の上、中国に強制送還されると伝えられたジェリーは、身に覚えのない罪から免れるため中国警察のスパイとして事件の捜査に協力させられることになる。日々電話で密に連絡を取り合う中国警察の言葉に乗せられるまま、ジェリーは銀行を監視して窓口係を探ったり、極秘かつ巨額の送金を行うなどして、事件の捜査を手伝う。
……と、これが絵に描いたような詐欺である。その驚愕の実話と映画化の全貌を、ジェリー自身とロー・チェン監督ら制作陣に語ってもらった。