アジア映画の祭典「大阪アジアン映画祭」が3月14日~23日の10日間、大阪市のABCホール、テアトル梅田などで開催される。20周年を迎える今年も、香港・台湾・タイを始めとしてアジア各地から最新の注目作が集結。映画祭に縁の深いリム・カーワイ監督が、その見どころを暉峻創三(てるおか・そうぞう)プログラミング・ディレクターに聞いた。(前後編の前編/後編を読む)
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リム・カーワイ(以下、リム) 大阪アジアン映画祭、あっという間に20周年を迎えますね。
暉峻創三(以下、暉峻) そうですね。でも、そんなに長くやっている感覚はないんです。ついこの間始めたばかりのような気がします。
リム 実は僕も15年前にデビュー作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』を大阪アジアンで上映していただきました。その後、『マジック&ロス』や『恋するミナミ』がコンペに入選し、バルカン半島で撮った『どこでもない、ここしかない』と『いつか、どこかで』は特別招待してもらいました。本当にお世話になっています。
暉峻 でも、その後の作品は応募してくれなかったですね(笑)。
リム タイミングの問題があって……(笑)。
オープニング作品はカザフスタンのミュージカル
リム では、まず今年のオープニング作品、カザフスタンの『愛の兵士』(2024年)について伺いたいです。
【愛の兵士】
身重の妻を持つシンガーソングライターの男は、魅力的なダンサーに惹かれてしまい……。90年代に一世を風靡し、現在も活躍する国民的グループA’Studioをフィーチャーした、美しい音楽と魅惑的なダンスが息をのむ傑作ミュージカル。
暉峻 過去2年はたまたま人気スターが出演する香港映画をオープニングに選びました。しかし、もともと僕は話題性よりも、「普通の部門で上映するとあまり注目されないかもしれないが、オープニングやクロージングにすれば多くの人に見てもらえる作品」を選ぶべきだと考えています。
この映画にはセールスエージェントがついておらず、監督がすべて自分で映画祭への出品、字幕リスト作成、プレス資料の準備まで手がけています。まるでカザフスタン版リム・カーワイですね(笑)。
リム カザフスタン映画というと、アート系で堅苦しいイメージがありますよね。でも、この作品はミュージカルでエンターテイメント要素が強く、大胆な選択だと感じました。
暉峻 監督の前作はベルリン国際映画祭の「ジェネレーション」部門でグランプリを受賞しましたが、日本では無名。そのため、コンペ部門に入れてもあまり注目されずに終わる可能性がありました。それよりも、多くの人に驚きを与え、新たな世界を見せてくれる映画としてオープニングにふさわしいと判断しました。
また、この映画にはカザフスタンで誰もが知る伝説的な音楽グループの楽曲が使われています。こうした作品は一般的にミュージックビデオのようになりがちですが、この映画は『シェルブールの雨傘』のように音楽がドラマに溶け込んでいます。唐突にミュージカルシーンが始まるのではなく、物語の流れの中で自然に展開されるのが特徴です。監督の演出力も非常に優れていて、カメラワークや俳優の動かし方は黒沢清級に上手いですね。