下駄華緒さんは1万人のご遺体を見送った経験を持つ元火葬場職員だ。各種メディアで火葬場の実態を発信し続け、最新のコミックエッセイ『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』第4巻を上梓した。
今回のインタビューでは、事故や事件によるご遺体の火葬や、災害時の火葬場の役割など、普段知ることのできない火葬場の裏側について語ってもらった。
電車事故で亡くなったご遺体に、小石が混ざっていた理由
電車事故で亡くなったご遺体は「轢死体」と呼ばれる。下駄さんは過去に、「轢死体」の火葬を経験したという。
「僕が実際に担当したご遺体は、身体はバラバラになっていて、ところどころ小石が混ざっていました」
「小石が混ざったまま火葬場まで運ぶなんて……」と思う人もいるかもしれない。しかし、下駄さんは「鉄道の職員さんはバラバラになったご遺体をできるだけ取りこぼさないよう、小石も一緒に拾ったんだろう」と語る。火葬場には、私たちの想像を超える現実が存在するのだ。
下駄さんによると、バラバラになったご遺体は火葬が難しいという。
「身体がバラバラになっていると、うまく火が当たらないことが多くて。そういう時は火葬専用の"棒"を使って向きを変えたりして、普段よりも注意しながら焼かないといけません」
水死して白骨化したご遺体の火葬も火葬が難しい
また、水死体の火葬も難しいそうだ。
「長時間水中にあった状態で肉がふやけてしまうと、骨にも水が染み込んでしまいます。そうなってしまうと、火を当てても骨がなかなか焼けないんですよ」
特に魚や微生物に身体を食べられてしまって、ほとんど白骨化した状態のご遺体は、焼き上がるまでにかなりの時間がかかるという。
火葬場職員には、想像以上の臨機応変さが求められる。しかし、下駄さんは「どんな場合でも、基本的には職員1人で判断しないという原則があるんです」と強調する。
例えば、バラバラのご遺体を火葬した場合、焼骨をもとあった場所に並べ直すかどうかは悩みどころだという。
「骨を並べ直して『きれいにしてくれた』と喜ぶ方もいれば、『勝手に触られた』と不快に思う方もいますから」
こうした判断は最終的に葬儀屋に委ねるそうだ。
「葬儀屋さんはご遺族と直接話す機会が多いから、ひととなりやご意向もある程度把握している。とにかく、火葬場職員が独断で判断しないよう心がけていますね」
公共インフラとしての火葬場の役割とは
火葬場は公共インフラとしても重要な役割を果たしている。災害時には「広域火葬計画」に基づいて対応するが、課題も多いという。
「街に1つしかない火葬場が災害で稼働できなくなったら、その地域では全く火葬できなくなってしまいます。災害対策の面から考えれば、いろんな地域のいろんな場所に火葬場があることが理想です」
火葬場は、私たちの生活に欠かせない存在でありながら、その実態はあまり知られていない。下駄さんの語る火葬場の裏側は、私たちに死と向き合うことの大切さを改めて考えさせてくれる。
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