――高校卒業後は「大阪スクールオブミュージック専門学校 プロミュージシャン科 ヴォーカル・テクニックコース」に進まれたんですね。この頃はミュージシャンを志されていたんですか？
湯浅 歌手になりたいと思ってました。当時カラオケボックスが人気になってきて、高校の頃からカラオケに行くようになったんです。僕は人としゃべれなかったんですけど、一応クラスのグループに所属はしていて、カラオケもはじめはついていってるだけでした。自分は1曲も歌わず手だけ叩いて、飲み物だけ飲んで帰るみたいな。でも友達が「湯浅も歌ってえな」と言ってくれて、1曲、2曲とレパートリーが増えていくうちに、「あれ？ 歌ってるときは人に見られても大丈夫や」となって。
――生まれて初めて、人前で表現をしたんですね。
湯浅 普段はしゃべれないんですけど、歌やったらいける。音楽って、歌うのって楽しいなと思ったんですね。高校卒業後、一度は大学を目指して浪人してたんですけど、同じく浪人中でギターを始めた友達から「2人でチャゲアスみたいになろ」って誘われて。両親に「音楽の専門学校に行きたい」と言いました。
――ご両親にはっきりと自分の意思を伝えたと。
湯浅 そのときが初めてちゃんと両親の目を見てしゃべった記憶です（笑）。急な話にもかかわらず両親は許してくれて、願書を出したんですが、その友達がやっぱりもう一浪すると言い出して。「先行って、待っといてくれ」って映画の台詞みたいなこと言うんです。「わかったわ」って言ったんですけど、その後彼とは連絡が取れなくなって、僕一人だけで専門学校に通うことになりました。
音楽の専門学校は出たが「音ズレてるで」
――専門学校はどうでしたか？
湯浅 僕みたいにちょっとカラオケで歌えるようになった人間と、昔からずっと音楽が好きでバンドやってきたような人たちとは、もうレベルが全然違って。みんながクイーンだレッド・ツェッペリンだ言うてるときに、僕だけ「歌謡曲っていいよね……」みたいな（笑）。先生や学校の仲間に色々教えてもらいながら、だんだん音楽を知っていきました。
――先生の指導のもと、2年間みっちりボイトレしたわけですよね。卒業後はどうされたんですか？
湯浅 専門学校の先生の紹介でゴスペルチームに所属して、ショッピングセンターのステージで歌ったり、結婚式でアカペラで歌う仕事とかをやってましたね。
――すごいじゃないですか。やっぱり歌はかなりお上手なのでは？
湯浅 一般の方と比べれば少しは……というぐらいで、ミュージシャンと呼べるほどの歌ではないんです。先生にもよく「音ズレてるで」と言われました。卒業後1年間ぐらいはなんだかんだで音楽活動を続けていたんですが、歌では食べていけないなと。その頃、バイト先の友達が所属している劇団が公演をやるというので、観にいったんです。
――芝居との最初の出会いですね。
