世界的巨大ターミナルから1日に数人しか使わないような小駅まで、日本には9000もの駅があるという。日夜乗っている電車の終点もそんなたくさんの駅のひとつだが、えてして利用者の多くはその手前の「いつもの駅」で下車してしまう。

 そうした様々な終着駅を歩き続けた鼠入昌史氏の著書『ナゾの終着駅』より、一部を抜粋して掲載する。

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 終着駅というのは、必ずしも遠くにあるわけではない。電車の中で眠ってしまって目が覚めたときには……なんていう、最果ての終着駅ばかりではない。

 ここで取りあげる駅は、もしかすると最果て以上に厄介な終着駅かもしれない。大阪メトロ御堂筋線、中津駅だ。

 御堂筋線の存在感は改めて語るべくもないが、なぜかこの大動脈地下鉄路線には、朝と夕方に「中津行き」という厄介な電車が4本に1本の割合で走っているのだ。

中心地・梅田からひと駅の御堂筋線「中津」

なぜ中津行きが厄介なのか

「中津行き」を示すメトロの案内板

 なぜ中津行きが厄介なのか。梅田やなんば、天王寺から電車に乗って新大阪を目指しても、中津駅は梅田駅のひとつ先。だからとうぜん新大阪まではたどり着かない。

 御堂筋線に乗りなれていない人が「これに乗ったら新大阪に行けて新幹線に乗れるな」と思って誤って中津行きに乗ってしまったら、もう大変なことである(まあ中津から新大阪まではたかだか2駅なのだが)。

 乗ってしまわなくても、さあ新幹線と思って御堂筋線のホームにやってきたのに、先に来るのが中津行きだったらちょっとショックだ。実際のところは5分も待たずに次の電車が来るのだから、たいした実害はない。それでも「うわ、中津行きかよ」と心の中で舌打ちしてしまうのが、人間なのだ。

 そんな“厄介者”の中津は一体どんな駅なのだろうか。梅田駅から地下鉄にひと駅だけ乗って、訪れてみた。

御堂筋線「中津」のホーム

 するとそこには……などともったいぶるほどのことはなくて、ごく普通の地下鉄の駅であった。中津駅がある場所は梅田駅(JRでは大阪駅である)の少し北。御堂筋線は地上に出て新御堂筋と並んで走って橋で淀川を渡るのだが、その直前の地下駅が中津駅だ。