駅の出口を抜けて南に歩いて行くと……
地下のホームから改札を抜けて階段を登って外に出ると、周囲には背の高いビルがいくつも建ち並ぶ。どちらかというとマンションよりはオフィスビルのほうが多いのだろうか。スーツ姿のビジネスマンも目立つ。
そのまま駅の出入口から少し南に歩くと、阪急電車の高架と国道176号の高架が横たわっているのが見える。176号の高架の下をそのまま南に歩いて行けば、10分ほどで大阪駅・梅田駅。176号は大阪駅のJR線の高架をくぐった先からは御堂筋と名乗る。大阪の南北を結ぶ、大動脈だ。
176号には阪急の高架も並行する。阪急電車の東側は、「茶屋町」と呼ばれる繁華街。明治から昭和初期にかけては凌雲閣という9階建ての建物があり、梅田のシンボルになっていた。いまは一帯に阪急系列の商業施設が多く建ち並び、阪急町の様相を呈している。阪急電車の高架下は阪急三番街だ。
つまり、中津駅はそうした梅田の町と地続きの駅、というわけだ。実際、中津駅のすぐ近くにも「梅田」の名を冠するホテルやビルがある。
少し打ち明けると、私も大阪に出張に出かけたときには、中津駅に近い東横インに泊まることが多い。梅田駅や大阪駅も徒歩圏内、それでいて御堂筋線ならすぐに乗れるから交通の便が悪くない。
そんなわけで、中津は事実上、梅田の一部といっていい。
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まさに「梅田の一部」のような場所にある「中津」。しかし、隣接するもうひとつの中津駅・阪急の「中津」には、日本を代表する一大ターミナルの近隣とは思えない光景が広がっていた。後編に続く(写真=鼠入昌史)。
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