世界的巨大ターミナルから1日に数人しか使わないような小駅まで、日本には9000もの駅があるという。日夜乗っている電車の終点もそんなたくさんの駅のひとつだが、えてして利用者の多くはその手前の「いつもの駅」で下車してしまう。

 そうした様々な終着駅を歩き続けた鼠入昌史氏の著書『ナゾの終着駅』より、一部を抜粋して掲載する。日本を代表する巨大駅・大阪は梅田に隣接する阪急「中津」に向かうと――。

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もうひとつの「中津駅」と“ものすごく狭いホーム”

阪急「中津」に到着

 さて、このように大都会の町中に佇む(と言っても地下駅であるが)中津駅。ところが、「中津」と名乗る駅はこの御堂筋線の駅だけではない。ごく近くに阪急の中津駅もある。

 国道176号をそのまま梅田方面とは反対に歩いてJRの梅田貨物線を跨ぐとすぐ隣に阪急電車の中津駅が見えてくる。御堂筋線の中津駅と同じように、実に小さな大ターミナルの隣の駅である。

 ただし、国道176号からは直接阪急中津駅に入ることはできない。手の届きそうなほど近くにあるのに、いったん176号の高架から階段を降り、薄暗い阪急電車の高架下の改札へ。阪急電車といったら、品格のあるマルーンカラーがおなじみだ。

 が、中津駅はそうした上品なイメージとは対極というか、薄暗いガード下はいかにも“昭和”。およそ阪急の駅があるとは思えないような、一見客が入るには勇気が要りそうな立ち飲み屋のすぐ脇に改札口に通じる階段が設けられている。つまるところ、大ターミナル・梅田のお隣とは思えないほどのさみしげな駅なのである。

見えてきた「阪急中津駅」の看板。駅への入り口はどこにあるのだろうか。
飲み屋(食堂)の横に駅ホームにつながる階段を発見。フォントからも雰囲気が漂う
独特な空気を放つ、中津駅へ続くガード下

 阪急の路線は、梅田駅から淀川を渡った先の十三駅まで神戸線・宝塚線・京都線の3路線が並走、十三駅で3方向に分かれていく。中津駅はこの3路線並走区間の途中の駅。ただ、京都線の線路にだけはホームがなく、停車するのは神戸線と宝塚線だけである。そしてこのホーム、実に狭いのだ。