スタートアップ業界で、女性起業家の多くがセクハラ被害に遭っている。自身も被害を経験し、被害者支援団体「スタートアップユニオン」を立ち上げた松阪美穂氏が、その実態を語った。

松阪美穂さん ©山元茂樹/文藝春秋

「100万円出すから、その代わりに愛人になってよ」

「100万円出すから、その代わりに愛人になってよ」

 松阪氏は、起業に向けて投資を募る中で、男性投資家からこのような露骨な対価型セクハラを経験した。断ると、その人やその関係者と連絡が取れなくなったという。

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「基本的にみなさん賢いので、やり口が巧妙なんですよ。そこが業界特有の性被害の特徴だと思っています。証拠を取りにくいようにしたり、被害者が声を上げにくくしたりとか。みなさん、そういう術はすごい長けています」

 セクハラをする側の特徴について、松阪氏はこう説明する。

「普通に社長さんらしい社長さんといった感じです。堂々としてて、話も上手で、メディアにも出ている方もいるので、信頼も得ているんですけど、でも実態はセクハラがある」

 松阪氏は様々な対策を講じていたが、効果は限定的だったという。

「いろいろな対策をしたうえで被害に遭って。今思うのは、被害を100%防ぐ方法はないということです」

 

「夜中でもなんでも来いよ」といきなり呼び出された女性も

 スタートアップ業界のセクハラ被害の深刻さは、松阪氏の経験だけではない。ある女性起業家の例を挙げ、「お子さんと旦那さんがいらっしゃるスタートアップ起業家の女性が、夜中に投資家から呼び出された話を聞きました」と松阪氏は語る。

「小さな子どもがいることを知っているのに、『こっちは投資した立場なんだから、夜中でもなんでも来いよ』みたいに誘われたって。そんなの逃げ場がないじゃないですか、投資を受けてしまうと」

 松阪氏は、このような状況を改善するため、セクハラに対する法整備を求める署名活動を2024年2月から開始した。

「いまだにセクハラの被害を受けても、法律が定まっていないことから、戦えるようになっていないんですよ。そこをきちんと整備してもらいたい」

過去1年間にセクハラ被害を経験した女性起業家が52%

 また、被害者支援のため「スタートアップユニオン」を立ち上げた。「被害者の方って、弁護士に話しにくかったりすることがあるんです」と松阪氏は説明する。「自分と同じような被害者としか話をしたくないって人がいるんです。そういった方に、スタートアップアップユニオンを利用していただき、頼れる居場所になれたらな」と、その目的を語った。

 スタートアップ業界のセクハラ問題は依然として深刻だ。松阪氏は「過去1年間にセクハラ被害を経験した女性起業家が52%」というデータを挙げ、問題の広がりを指摘する。

「ハラスメントの撲滅や誰もが夢を追える社会にむけて一歩一歩取り組んでいきたい」

 彼女の活動が、スタートアップ業界の健全化につながることを期待したい。

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