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「作者がドヤ顔できるような作品じゃないと絶対に売れない」

――受賞作の『屋上のウインドノーツ』が2015年6月発売。『さよならクリームソーダ』は翌年の5月ということで、満を持しての発売ですね。

額賀 私、「いや~私良い小説書いたなあ」みたいな、自信満々の態度でいたんです。だけど、その割にはあまり反響がないなぁ、何でだろうなぁって思い始めて……(笑)。

 広告代理店で働いていたので、良いものが確実に売れるわけではないことは分かってはいたんですけれど、そこで改めて気づいたというか。その頃にKKベストセラーズの編集者と会って、「最近、本売れませんね~」という話になり、「じゃあ売れる方法探そうか」とi

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うことで、『拝啓、本が売れません』に繋がっていくんです。

 ただ、取材のなかで元電撃文庫編集長でストレートエッジ代表取締役社長の三木一馬さんから、「作者がドヤ顔できるような作品じゃないと、絶対に売れない」と言われて。そこは曲げなくていいんだな、と安心しました。また、「作品の想定読者にちゃんと届く物語の作りができているのか?」「青春小説を読んでいる人が求める展開をちゃんと描けているのか?」「読者サービスをすることの大切さ」という話をしたことも印象に残りましたね。

©文藝春秋

 「ブラッシュアップの機会は逃しちゃダメ」

――かなり踏み込んだアドバイスをしてくれて、良かったですね。他の方のアドバイスで、『さよならクリームソーダ』に活かされたことはありますか?

額賀 さわや書店フェザン店(盛岡市)店長の松本大介さんから、「良い意見だけじゃなくて悪い意見も聞いて、ブラッシュアップできると思ったらとことんやったほうがいい」「ブラッシュアップの機会は逃しちゃダメだよ」って言われたこともあって、文庫化にあたりかなり手を入れました。その結果、書き出しと終わりはまるで変わったものになりました。

――それは、楽しみですね。

額賀 丸2年の心境の変化もありますし、「ここの一言余計だったな」っていう部分がちょいちょいありますね。一方で、2年前の自分にしてやられたみたいなところも、結構ありました。ゲラに赤字を入れてるとき、「ここの一文ダメだな」「2年前の自分ダメだな」って思って「トル」って書いてみると、5ページ後ろとかでその一文を上手いこと使っていて、「(2年前の私に)ごめんなさい、負けました」みたいな(笑)。

――青春小説ですから、文庫化で定価が下がると、若い読者が手に取りやすくなりますね。

額賀 付き合いのある若い作家さんには文庫書下ろしがメインの人が多くて、そういう人たちの話を聞くとやっぱり文庫の棚に本がないときついなぁと思うことがあります。いまは、文春文庫の棚に2冊と、小学館文庫の棚に1冊しかないですからね。増やして行きたいと思います。

©文藝春秋

※後編[日大出身、ゆとり世代の作家が問いかける「ブラック部活問題」]へ続く

拝啓、本が売れません

額賀 澪(著)

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