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本当に売れないか、書店で実証実験した結果……

――そうやって、ファンが増えて行くんですね。くまざわ書店南千住店では、サイン会の前から『拝啓、本が売れません』の応援キャンペーンを続けていますね。

額賀 お店のほうから、「本当に売れないのかうちの店舗で実証実験してみて良いですか?」と言ってくださって。10冊売れたときは達成記念のショートショートを書いて、20冊売れたら『拝啓、本が売れません』のPOPを私が作って店頭で飾る(5月10日に達成)、30冊で『風に恋う』のPOPを作って飾る(5月28日達成 )、と盛り上げてくださって、40冊売れたら『さよならクリームソーダ』のPOPを飾ってもらえることになっています。

――単店で30冊以上とは、すごいですね。

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額賀 そうですね、店長さんも「うちのような規模の店舗で、単行本で実用書でも小説でもない本があれだけ売れるのはすごいよ」って言ってくださっています。

「そうか、私は今、家族が書きたかったんだ」

――そうした経験を6月発売の『さよならクリームソーダ』(文春文庫)、7月発売の『風に恋う』に活かされたと聞いていますが、まずは『さよならクリームソーダ』の内容について教えていただけますか。

額賀 美大に進学した主人公が、大学近くのオンボロアパートに住みながら、大学生活を通して色々な人と出会っていくという物語です。かつてすごく大きく悲しい恋愛をした登場人物とか、才能の無さとかスランプに悩む先輩とか、そういう大学生の青春を描いたお話になっています。

 私は日大芸術学部出身で、美大生の話をずっと書きたいと思っていました。松本清張賞に応募作である『屋上のウインドノーツ』を提出し、そのあとの選考結果の発表の日をひたすら待つしかない時間の中で書いたのが『さよならクリームソーダ』です。大きな出来事とか事件があったり、物語の明確なゴールがあったりするわけじゃないけれど、人と人がつながって理解し合っていくような話を書きたいなと思いました。

 書いていくうちにだんだん家族の話が入り込んできて、「そうか、私は今、家族が書きたかったんだ」って分かってきました。そして、松本清張賞を受賞した時は、すでに第一稿は出来上がっていたんです。

©文藝春秋