学生専用階段に“阪急らしい”高級住宅地。ただ……
今も反転フラップ式(文字の書かれた板がパタパタと回転するアレ)の発車案内があるホームから改札口へは階段を降りて地下通路を通る。
駅舎はホームの東側とほぼ中央に2カ所あり、さらに西側には「学生専用」と看板が掲げられた階段もあった。そこからは小学生から高校生までまさに学生たちが盛んに登ってくる。駅の南西に雲雀丘学園という私立校があって、そこに通う子どもたちが利用するために出入り口が設けられているようだ。
私がその出入り口に行けるわけもなく、ホーム中央部北側に位置する出入り口に向かう。
取り立てて特徴があるわけでもない武骨な駅舎から外に出ると……そこはひばりがさえずる田園地帯でもなければ遊園地があるわけでもなく、ただの住宅地であった。
駅前のロータリーもなく、駅舎のすぐ目の前に大きな家(邸宅と呼ぶのがふさわしい)が建つ。
さらに少しあたりを歩き回ってみると、建ち並んでいるのは大きく立派な家ばかり。そう、雲雀丘花屋敷駅の周辺は高級住宅地なのである。
町を歩きながら、さすが阪急沿線だなあと思う。阪急はその草創期、鉄道を通して沿線の宅地開発を行うという経営手法で規模を拡大してきた。その手法は首都圏でも現在の東急などが取り入れており、今や私鉄経営の王道。
きっとこの町も、そうした阪急が開いた町のひとつなのだろう……。そう考えて調べてみたら、まったくの的外れであった。
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一見すると「ザ・私鉄沿線の高級住宅街」にみえる雲雀丘花屋敷。そんな予想を裏切る知られざる過去とは……。後編に続く(写真=鼠入昌史)。

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