大阪を中心とする関西地方に暮らしている人にとって、「宝塚」という町はやや特別な存在感を持って捉えられている町ではないかと思う。こんなことを関東の人間に言われても余計なお世話だろうが、「宝塚」という町の名にはやはり他の町とは少し違う、特別な響きがある。

 単に「宝塚」といったとき、だいたいの場合は宝塚歌劇団を意味することが多い。宝塚歌劇団は、あまりにも有名すぎる。おかげで、宝塚歌劇団から町の名も宝塚と名付けられたと勘違いしている人もいるかもしれない。トヨタ自動車の豊田市という例もあるから、歌劇団から宝塚と命名されたとしても、何の不思議もない。

 が、実際にはそんなことはなく、地名としての宝塚はだいぶ古いようだ。

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 宝塚市内には“塚”と呼ばれる古墳が多く、塚のそばで物を拾うと幸せになるという言い伝えがあったとか。それが転じて宝塚というようになったと、江戸時代の文献に記されている……というようなことが、宝塚市のホームページに載っていた。

 真偽は定かではないようだが、いずれにしてもかなり古くからこの地域は宝塚と呼ばれていたことは間違いない。先行したのは、歌劇団ではなく地名なのである。

阪急“ナゾの終着駅”「宝塚」には何がある?

 ……などということを書き連ねても、本質的にはあまり意味がないだろう。少なくとも、宝塚を訪れる機会に乏しい人ほど、宝塚=宝塚歌劇団というイメージが定着しているといっていい。そうして名を轟かせる宝塚、ほんとうはどんな町なのだろうか。

阪急“ナゾの終着駅”「宝塚」には何がある?

 宝塚市の玄関口・宝塚駅に向かうルートはいくつか用意されている。大阪駅を拠点にすれば、JR宝塚線か阪急宝塚線を使うのが王道だ。

今回の路線図。宝塚駅に向かうルートは、JR宝塚線か阪急宝塚線を使うのが王道

 どちらも区間快速や急行に乗って30分ほど。しばらくは猪名川を挟んで離れたところを走っているが、川西市付近からはほとんど並走し、宝塚駅はどちらも武庫川の左岸側。間に大きなロータリーを置いて向かい合っている。JR線は宝塚駅から先も武庫川に沿って線路を延ばしているが、阪急宝塚線は宝塚駅が終点だ。

「まさしく宝塚駅は、阪急の城である」

比較的コンパクトなJRの宝塚駅に対し……

 JRと阪急電車、どちらで宝塚駅にやってきても、抱く第一印象は想像通りだ。宝塚駅は、まさに阪急の駅である。JRの宝塚駅は比較的コンパクトなのに対し、阪急の宝塚駅はまるで中世ヨーロッパの古城の如く堂々たる面構え。

明らかに存在感がちがう阪急の宝塚駅

 さらに駅舎から直結のソリオという商業施設には阪急宝塚(百貨店)が入り、他にも並みいる専門店が目白押し。高級感のある店が入っているかと思えば、古くから地場で頑張ってきたのであろう個人店も軒を連ねる。