ずいぶん前のことだが、京都に住んでいたときによく阪急電車を利用した。京都線に乗って梅田方面にやってきて、神戸線か宝塚線に乗り継ぐとき、まあだいたいは十三駅で乗り換える。そのとき決まって目に入るのが、ホームの上にあるマクドナルドであった。

 まだまだエキナカなどという言葉がなかった時代。マクドナルドが駅の中にあるなんてさすが阪急、すげえなあと思ったものだ。ちょっとテイクアウトしたいと考えたりもしたが、おいしい匂いを阪急電車の中で漂わせる勇気がなく、さすがに行かずじまい。そしてそのマクドナルドはいつの間にかなくなって、ローソンやカフェに店代わりをしていた。

 ……と、そういうわけで今回は十三駅である。

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バツグンの知名度と存在感だが…

阪急線“ナゾの途中駅”「十三」には何がある?

 大阪梅田駅を出発した阪急電車各路線が、淀川を渡って神戸・宝塚・京都の3方向に分かれる分岐点にある。阪急電車ユーザーのみならず、関西在住の人ならば知らぬものはいないくらいのターミナルだ。

 それでいて、「十三」と書いて“じゅうそう”と読むというその難読ぶりは全国にすら轟く。関西には「放出」(はなてん)、「喜連瓜破」(きれうりわり)など難読駅名がいくつもあるが、その中でも知名度でいえば十三が圧倒しているといっていい。

 かくのごとく、バツグンの知名度と存在感を誇りながら、では十三で降りてみたことがあるという人はどれだけいるのだろうか。

今回の路線図。「十三」は一大拠点・梅田駅からたったふた駅なのにすべての列車が停まる。ちなみに読み方は「じゅうそう」

 梅田駅からたったふた駅、数分の場所にあり、すべての列車が停まるターミナルなのに、だいたいの人は乗り換えに使うことはあってもわざわざ降りる機会は少ないのではなかろうか。そういえば、「十三はヤバいからあまり降りない方がいいよ」などと友人から言われたこともあったような……。

 とはいえ、さすがに梅田駅からほんの数分の駅がそんなにもヤバいわけがなかろう。地図を見ればあの橋下徹元大阪府知事も出身の名門、府立北野高校も十三駅の近くにあるくらいだし、なんといっても阪急電車の駅である。