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 その小さな改札を抜けると、ザ・私鉄沿線、すぐに商店街のアーケードの中に出た。このしつらえを関東の人にもわかりやすく伝えるとすれば、東武東上線の大山駅などによく似ているといったところだろうか。

 

 十三駅西口のアーケードは、トミータウンという。「十三」を読み替えてトミー、ということなのだろう。アーケードの中に掲げられている横断幕に小便小僧が描かれているのは、線路に沿って北に続くしょんべん横丁から来ているものだと思われる。

 

 ごみごみした細い路地に小さな立呑み屋やら何やらがひしめき合う、まさしく昭和っぽい繁華街、である(飲み屋街なのに共同トイレがなく、文字通り立ち小便をする酔っ払いが少なくなかったからしょんべん横丁になったとか)。

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 反対に線路沿いに南に向けても商店街。十三駅前西商店街というようだが、もともとは波平通りといった。トレードマークが、顔が磯野波平、体が鉄腕アトムという摩訶不思議なキャラクターで、それが一部によくウケていたとかなんだとか。

 

 まあ、もうそれが許される時代ではないので、波平通りの面影はとりあえず消えて、いまは普通に正式名称の十三駅前西商店街で通っているようだ。こちらの商店街も、しょんべん横丁と基本的には変わらない、雑多なごみごみとした庶民派の町である。

 

駅前には大きな道路…交通量もすごい

 トミータウンのアーケードはすぐに終わり、いわゆる十三の駅前ともいうべき広い交差点に出る。ここを北から南に通っているのが国道176号、通称“イナロク”だ。北へ行けば豊中・川西を抜けて宝塚方面へ。つまり阪急宝塚線と並んで走る。南方面ではすぐに十三大橋で淀川を渡り、梅田のど真ん中でそのまま御堂筋に移り変わる。

 
 

 つまり大阪の大動脈が、十三駅の駅前を通っている。もちろん交通量も多く、さらにひと昔前には他に淀川を渡る橋も少なかったために大渋滞に悩まされていた。十三の繁華街のど真ん中をとおるわけだから、それもまた自動車交通の大動脈にしてはボトルネックだっただろう。

 そこで建設されたのが国道176号の十三バイパスで、淀川の下流側の新十三大橋ともども1967年に完成した。十三大橋が南行き3車線・北行き1車線、新十三大橋が北行き一方通行4車線。路地レベルの道ならまだしも、大通りでこれなのだから、大阪はクルマでうろうろするのにも意外に難易度が高い。