宝塚ファミリーランドは2003年に閉園、跡地はマンションなどになっている。ただ、歌劇団はもちろんいまも健在だ。
阪急沿線を代表する行楽地という、宝塚駅周辺の性質はいささかも変わっていないといっていい。大劇場周辺に加え、武庫川の対岸にはいまも温泉旅館や日帰り温泉。新旧二つの温泉地をベースに、古くは箕有電車、のち阪急電鉄が総力を挙げて開発した結果が、いまの宝塚なのだ。
しかし、である。宝塚が阪急の町であることなど、ハナからわかっていたことである。だからここで旅を終えてしまっては、最初からわかっていることを再確認しただけに過ぎない。わざわざはるばる宝塚に来た甲斐がない。改めて、もう少しだけ宝塚駅周辺を歩くことにしよう。
JR線の北側に出ると町の雰囲気が変わってきたような…
宝塚駅周辺の市街地は、武庫川の北側にJR線と阪急電車の駅があり、その周囲に広がっている。長尾山系と六甲山系から流れ出てきた武庫川の扇状地の扇頂に位置し、北も南もすぐそこまで山が迫っている渓谷沿いの町だ。
だから、武庫川の左岸も右岸も、どちらに行っても少し歩くだけで急坂にぶつかる。急斜面を切り開いているから、道路も地形にあわせてくねくねと入り組んだ路地ばかり。
そうした中にも大きなマンションや立派な御邸宅などが並んでいて、歴史ある高級住宅地らしい雰囲気を漂わせる。あまり意識はしなかったが、駅周辺の大通りから離れれば、見かけるクルマは高級車ばかりだったような。
ただ、JR線の北側に出ると、少しだけ雰囲気が違う。
もちろん駅の目の前には小洒落た雰囲気の商店街があったりして、阪急の町・宝塚と本質的には変わらない。それでも大正時代以降発展したという武庫川右岸側の住宅地とはどことなく様相が異なる。それは、少し歩いて有馬街道という道筋に出ると、ますます明確なものになった。
JR線や阪急電車に沿うように、東西に通っている有馬街道。古くは有馬温泉と大阪や京都を結んでいた街道で、その名の通り有馬温泉に通じる道だった。