その数日後には、世界的なBLM(ブラック・ライブズ・マター)ムーブメントを引き起こすきっかけとなった、2020年に米国ミネソタ州で白人警官に殺害された黒人男性ジョージ・フロイドについてツイートしていた。
「麻薬中毒者の詐欺師ジョージ・フロイドのことを気にかける人はほとんどいなかったと思うけど、彼の死は黒人を権利のないサルとみなし、警官を殺人者とみなす人々がまだいるということを改めて証明したわよね」
さらに2021年のアカデミー賞における多様性や、中国製のコロナ・ワクチンへの揶揄もしていた。
(※スペイン人のカルラはスペイン語でツイートしており、上記はその英訳文を筆者が邦訳したもの。なお、これらのツイートはすでに削除されている)
映画賞を総なめにすると言われていたが……
カルラはアカデミー賞以外にも多くの映画賞で主演女優賞にノミネートされ、今季の映画賞は『エミリア・ペレス』とカルラが席巻するとさえ言われていた。
過去のツイートがメディアで取り上げられる前の1月5日(現地時間)に開催されたゴールデングローブ賞では、『エミリア・ペレス』が最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル部門)を獲得。カルラは自身が「仏教の色」と呼ぶオレンジ色と黄色のドレスをまとって感動的な受賞スピーチを行っていた。
「光は必ず闇に勝ちます。私たちを刑務所に入れること、殴ることはできても、私たちの魂や抵抗、アイデンティティを奪うことは決してできません」
しかし、この後に過去のツイートが明るみに出て、カルラはやはり主演女優賞にノミネートされていた2月のSAGアワード(全米映画俳優組合賞)を欠席。受賞も逃している。
受賞を逃した、“非常に皮肉な”タイミング
3月のアカデミー賞授賞式でカルラは、『エミリア・ペレス』を制作したNetflix社に促され出席こそ果たしたものの、レッドカーペットは避けてテーブル席に直行。しかも共演者であるゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメスとは離れた席に座るという有様だった。ここでも主演女優賞だけでなく、映画自体も作品賞を手にすることは叶わなかった。
アカデミー賞は多様性の実現を目指し、2024年にマイノリティを包括する新ルールを適用したばかりだった。そんな中、カルラの人種や宗教に対する差別主義的な発言が注目され、『エミリア・ペレス』がほとんどの賞を逃したのは、非常に皮肉なタイミングだったと言える。大統領2期目に就任したドナルド・トランプが、米国からトランスジェンダーの排斥というより、存在そのものを抹消する政策を取り始めているからだ。
トランプは今年1月20日の大統領就任と同時に「性別は男女の2つのみ」とする大統領令に、その直後に「19歳未満への性別適合医療を廃止することを目指す」大統領令に署名した。

