「たま」のメンバーとして知られる石川浩司さんが、バンド結成から解散までの軌跡と、その後の人生について語った。「イカ天」でのブレイクから36年。石川さんは「いつの間にそんなに! 恐ろしいね~」と笑う。

メジャーデビュー頃の「たま」

 石川さんは10代から音楽を始めたが、特別な音楽知識はなかったという。「表現したい」という気持ちがあり、音楽が手っ取り早かったのだ。

「僕はいまだにギターのFコードは不器用で押さえられなくて、指2本3本で押さえられるコードだけでやってるよ。それでも表現できるからね」と石川さんは語る。

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「イカ天」での衝撃的なパフォーマンス

「イカ天」での5週目の演奏は、審査員を驚かせた。石川さんは「5週目は勝っても負けても『イカ天』に出るのが最後だったから、それなら観てる人にギャフンと言ってもらいたくて」と振り返る。バンド合戦なのにギター1本で、あとは全員がコーラスという形で臨んだのだ。

石川浩司さん

「たま」は2003年に活動19年で解散。石川さんは「ピーターパンだったんで『20歳の大人になる前に解散しよう』って」と笑う。解散後も音楽活動は続け、「パスカルズ」というバンドでヨーロッパツアーに向かったという。

 石川さんの人生は、奇跡的な出会いの連続だった。西荻窪の寿司屋で偶然出会った大林宣彦監督の娘さんから映画出演のオファーを受けたことも、その一つだ。

 現在も、石川さんは空き缶コレクションに熱中している。40年で約3万種類を集めたという。「飲料ってどんどんペットボトルに移行してるから、いっそ全部ペットボトルになってくれればやめられるんだけど」と苦笑する。

 石川さんは今も音楽活動を続けている。「死」をテーマにした曲も増えてきたという。「誰でもいつか死ぬことはわかってるから、その中でいかに、それまでの間の『生』を楽しむかっていうことをね」と語る石川さん。

 最後に、年を重ねることについて石川さんはこう語った。

「いつもそのときに一番楽しいことをやるようにしてれば、まあ、そんなに不満なく逝けるんじゃないかな~」

撮影:石川啓次
取材協力:レストラン多花美

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